わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック14 古さを知る3(科学的方法3)

2014-06-30 19:37:49 | 騙しのテクニック
5) C-14法、TL法、以外の機器を用いた方法。(前回の続きです。)

 ② 中性子放射化分析法(NAA法)。

  焼き物の胎土を構成する元素の分析から、その産地を特定する事が出来る方法です。

  微量成分の分析法として優れている為、良く利用されている方法です。

  昔は、各地の窯場で生産される焼き物は、その土地の土(磁土)を使いました。各地の土は、

  同じような成分であっても、微量な成分構成に差があります。その違いを検出する方法です。

  ) 原理。

   a) 安定している元素の原子核に、加速器や原子炉で作られた中性子を衝突させます。

    中性子を原子核に吸収させて、不安定な原子核にする事を「放射化」と言います。

   b) この不安定な原子核は、崩壊(放射性壊変)をして、再び安定な核に変わります。

   c) 放射性核種が壊変し、原子核数が半分になるのに要する時間は常に一定であり、

     これを半減期と呼びます。

     注: 放射性核種とは、自然に放射線を放出して崩壊し、他の原子核に変わる原子核の

      事です。自然界に存在する天然放射性核種(ウラン等)と、人工放射性核種とがあり

      ます。

     半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に

     固有になっています。

    d) それ故、半減期と放射線のエネルギーを測定する事により、核種(元素の種類)が

     判り、更に放射線の強度を測定する事により、核種の量(原子核の個数)を決める事

     ができます。

  ) 放射化分析法における利点。

   a) 試料の形状に制約がなく,少量の試料で多元素を同時に分析する事が可能です。

     特に焼き物に於いては、胎土の構成元素の比率や、微量元素の測定が可能になります。

     胎土の微量元素の量を詳細に比較できる事で、胎土の産地が特定できます。

   b) 化学操作を行わないので、不純物の混入の恐れが少ないです。

   c) 試料を破壊せずに分析でき、試料の化学組成の高感度分析を行うことができます。

  ) 放射化分析法の利用例。

    「古九谷」が加賀の九谷で作られた物か、肥前の有田で作られた物かの論争が長く続いて

    いましたが、この分析方法から「有田産」と判明しました。

 ③ 紫外線照射法(BL法)。

  塗料を使った共色直しの贋作は多発しており、数年たっても変色しない塗料も登場してきて

  います。それを見抜くのも容易ではないとの事です。紫外線照射法は暗い場所で、ブラック

  ライト(近紫外線)を当てると言う、簡単な方法で見破る事が出来ます。

  ) 原理。

   一般に塗料には、蛍光物質が含まれています。暗所で紫外線を当てると、塗料を塗った部分は

   白っぽく発光します。

  ) 紫外線は「近紫外線」と呼ばれる、可視光線と紫外線の中間の波長ですので、人の眼には

    無害との事です。

  ) ブラックライト(BL)の光自体は、人間の目にほとんど見えません。

    BLを当てた物体はその中の蛍光体だけが発光するため、非破壊検査に使われるます。

  ) 但し、最近では、蛍光体の入っていない塗料もありますので、これには使えません。

  ) このライトは容易に入手が出来ます。電球型と蛍光灯タイプがあり、千数百円~一万円

    程度の価格です。

6) 古陶磁に測定機器を使う事に付いて。

 ① 上記の検査で使う機器は、個人で持てる物と、持てない物があります。

   規模の大きい物や、自分では検査できず、専門家に依頼する事が多いです。

   各大学や研究機関が保有する特殊の機械です。それ故、誰でも簡単に検査に掛ける事は出来

   ません。

 ② 重要な部分は人間が担当しています。

  試料の採取と選定、機器の操作、データの収集と解析など人手に頼っています。

  最終的な決定は、人間が行う事に成ります。

 ③ 現在の機器には、風化の具合や古色の様子を読み取る事さえ出来る、機器も登場しているとの

  事です。

以下次回に続きます。
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