わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック13 古さを知る2(科学的方法2)

2014-06-29 16:18:26 | 騙しのテクニック
3) 熱ルミネッセンス法(TL法)

 C-14法が放射性炭素を測定するのに対し、TL法は無機物の鉱物を試料にする測定方法です。

 陶磁器は当然、石英や長石などを多量に含みますので、直接年代が測定できます。

 ① 原理。

  ) 石英や長石、蛍石など自然界にある鉱物は、天然に存在する放射線(天然ラジウム、

   ウラン、宇宙線など)の影響で、電子エネルギーを蓄えています。

  ) 自然の鉱物は加熱すると蛍光を発します。特に蛍石は顕著です。

   これを「熱ルミネッセンス(加熱発光)」と言います。

  ) 但し500℃以上に加熱すると、蓄えらえたエネルギーは発散され、発光が止まります。

    しかし、加熱温度が下がると、自然界の影響で再びエネルギーが蓄積始めます。

    即ち、500℃以上で蓄積がリセットされる訳です。

 ② 焼き物への利用。

  ) 焼き物は必ず500℃以上で焼かれています。それ故、リセット後のエネルギーの蓄積

   度合いによって、数百年~数千年前に焼かれた事が判明します。

   リセット後のヘネルギー量は、500℃以上で再加熱し、出てきた光の強度を測定して行い

   ます。実際には、蓄積された放射線量を光の強度から計算し、現地での推定年間放射線量で

   割る事により、加熱されてからの時間が解かります。

   但し、その焼き物が屋外又は、屋内にあったかによって、自然から受ける放射線の量が変化

   しますので、その保管場所や発掘状態によって、数十年の誤差が生じるといわれています。

    注: 福島の原子力発電所の事故で、屋内と屋外では被爆量に差がある事は、自明な事です

      同様の事が言える訳です。

  ) この測定方法では、現代の作品から古い時代の作品まで判別できます。

    又、前回お話した「C-14法」の測定方法と併用できれば、より正確な時代が特定されます。

  ) この測定方法の成功例として、長石成分を測定した結果、新潟県六日町の須恵器の出土

    品が、大阪府堺市の陶邑古窯群で焼成された事が判明し、その伝播ルートも特定できた

    そうです。

  ) 熱ルミネッセンス法を逆手に取った贋作。

    この方法は絶対的なものではありません。贋作に予め人工的にⅩ線を照射し、検査を誤魔

    化した事例も報告されています。

4)  光ルミネッセンス(OSL)法

   鉱物結晶に光を照射した時に、波長の異なる光が放出されることを利用して年代を測定する

   方法です。焼き物や堆積物に普通に含有される石英や長石結晶から、放出される光を測定し

   ます。 実際の年代測定の手法は、上記TL法と同じですが、試料の採取時にできるだけ日光

   などの光を受けないようにする必要があります。

   この方法では、鉱物結晶が光を受けなくなってからの年数がわかるので、地中にあった発掘品や、

   土壌をはじめ、各種堆積物の直接的な年代測が可能です。

5) 上記以外の機器を用いた方法。

  古陶磁では何処で作られた物であるかが、判明する事で贋作を見破る事が可能になります。

  昔は土の有る処に窯を築き、当地の土を使っていますので、名前と土が一致して当然です。

  しかし、しばしば名前と産地が一致しない場合、「材料の元素分析法」を用いると陶磁器の

  生産地を知る事ができます。「材料の元素分析法」には以下の方法があります。

 ①  蛍光X線分析法(XPF法)

  ) 原理。

    試料にX線を当てると、原子中の電子が飛び出します。その空いた部分に外側の電子が入り

    ます。その時その元素特有のエネルギーのX線が放出されます。

    注: 原子核を中心に電子が複数の軌道を周回しています。軌道には定まった数の電子が

      存在し、抜けた穴にはその外側の軌道上にある電子が、入り込みます。

  ) 陶磁器の場合、胎土や釉の構成元素を分析する事ができます。

    特に胎土の分析から、何処の土(産地)かが判ります。

  ) この方法が注目される様になったのは、加藤唐九郎氏が関係したとする「永仁の壷」

    事件によります。

     注: 「永仁の壷事件」とは、1959年重要文化財に指定された、鎌倉時代の古陶が、

      「蛍光X線分析法」によって現代の材料(特に灰釉)である事が判明し、1961年重文の

      指定が取り消された事件です。

 ② 中性子放射化分析法(NAA法)。

以下次回に続きます。
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