3) 熱ルミネッセンス法(TL法)
C-14法が放射性炭素を測定するのに対し、TL法は無機物の鉱物を試料にする測定方法です。
陶磁器は当然、石英や長石などを多量に含みますので、直接年代が測定できます。
① 原理。
) 石英や長石、蛍石など自然界にある鉱物は、天然に存在する放射線(天然ラジウム、
ウラン、宇宙線など)の影響で、電子エネルギーを蓄えています。
) 自然の鉱物は加熱すると蛍光を発します。特に蛍石は顕著です。
これを「熱ルミネッセンス(加熱発光)」と言います。
) 但し500℃以上に加熱すると、蓄えらえたエネルギーは発散され、発光が止まります。
しかし、加熱温度が下がると、自然界の影響で再びエネルギーが蓄積始めます。
即ち、500℃以上で蓄積がリセットされる訳です。
② 焼き物への利用。
) 焼き物は必ず500℃以上で焼かれています。それ故、リセット後のエネルギーの蓄積
度合いによって、数百年~数千年前に焼かれた事が判明します。
リセット後のヘネルギー量は、500℃以上で再加熱し、出てきた光の強度を測定して行い
ます。実際には、蓄積された放射線量を光の強度から計算し、現地での推定年間放射線量で
割る事により、加熱されてからの時間が解かります。
但し、その焼き物が屋外又は、屋内にあったかによって、自然から受ける放射線の量が変化
しますので、その保管場所や発掘状態によって、数十年の誤差が生じるといわれています。
注: 福島の原子力発電所の事故で、屋内と屋外では被爆量に差がある事は、自明な事です
同様の事が言える訳です。
) この測定方法では、現代の作品から古い時代の作品まで判別できます。
又、前回お話した「C-14法」の測定方法と併用できれば、より正確な時代が特定されます。
) この測定方法の成功例として、長石成分を測定した結果、新潟県六日町の須恵器の出土
品が、大阪府堺市の陶邑古窯群で焼成された事が判明し、その伝播ルートも特定できた
そうです。
) 熱ルミネッセンス法を逆手に取った贋作。
この方法は絶対的なものではありません。贋作に予め人工的にⅩ線を照射し、検査を誤魔
化した事例も報告されています。
4) 光ルミネッセンス(OSL)法
鉱物結晶に光を照射した時に、波長の異なる光が放出されることを利用して年代を測定する
方法です。焼き物や堆積物に普通に含有される石英や長石結晶から、放出される光を測定し
ます。 実際の年代測定の手法は、上記TL法と同じですが、試料の採取時にできるだけ日光
などの光を受けないようにする必要があります。
この方法では、鉱物結晶が光を受けなくなってからの年数がわかるので、地中にあった発掘品や、
土壌をはじめ、各種堆積物の直接的な年代測が可能です。
5) 上記以外の機器を用いた方法。
古陶磁では何処で作られた物であるかが、判明する事で贋作を見破る事が可能になります。
昔は土の有る処に窯を築き、当地の土を使っていますので、名前と土が一致して当然です。
しかし、しばしば名前と産地が一致しない場合、「材料の元素分析法」を用いると陶磁器の
生産地を知る事ができます。「材料の元素分析法」には以下の方法があります。
① 蛍光X線分析法(XPF法)
) 原理。
試料にX線を当てると、原子中の電子が飛び出します。その空いた部分に外側の電子が入り
ます。その時その元素特有のエネルギーのX線が放出されます。
注: 原子核を中心に電子が複数の軌道を周回しています。軌道には定まった数の電子が
存在し、抜けた穴にはその外側の軌道上にある電子が、入り込みます。
) 陶磁器の場合、胎土や釉の構成元素を分析する事ができます。
特に胎土の分析から、何処の土(産地)かが判ります。
) この方法が注目される様になったのは、加藤唐九郎氏が関係したとする「永仁の壷」
事件によります。
注: 「永仁の壷事件」とは、1959年重要文化財に指定された、鎌倉時代の古陶が、
「蛍光X線分析法」によって現代の材料(特に灰釉)である事が判明し、1961年重文の
指定が取り消された事件です。
② 中性子放射化分析法(NAA法)。
以下次回に続きます。
C-14法が放射性炭素を測定するのに対し、TL法は無機物の鉱物を試料にする測定方法です。
陶磁器は当然、石英や長石などを多量に含みますので、直接年代が測定できます。
① 原理。
) 石英や長石、蛍石など自然界にある鉱物は、天然に存在する放射線(天然ラジウム、
ウラン、宇宙線など)の影響で、電子エネルギーを蓄えています。
) 自然の鉱物は加熱すると蛍光を発します。特に蛍石は顕著です。
これを「熱ルミネッセンス(加熱発光)」と言います。
) 但し500℃以上に加熱すると、蓄えらえたエネルギーは発散され、発光が止まります。
しかし、加熱温度が下がると、自然界の影響で再びエネルギーが蓄積始めます。
即ち、500℃以上で蓄積がリセットされる訳です。
② 焼き物への利用。
) 焼き物は必ず500℃以上で焼かれています。それ故、リセット後のエネルギーの蓄積
度合いによって、数百年~数千年前に焼かれた事が判明します。
リセット後のヘネルギー量は、500℃以上で再加熱し、出てきた光の強度を測定して行い
ます。実際には、蓄積された放射線量を光の強度から計算し、現地での推定年間放射線量で
割る事により、加熱されてからの時間が解かります。
但し、その焼き物が屋外又は、屋内にあったかによって、自然から受ける放射線の量が変化
しますので、その保管場所や発掘状態によって、数十年の誤差が生じるといわれています。
注: 福島の原子力発電所の事故で、屋内と屋外では被爆量に差がある事は、自明な事です
同様の事が言える訳です。
) この測定方法では、現代の作品から古い時代の作品まで判別できます。
又、前回お話した「C-14法」の測定方法と併用できれば、より正確な時代が特定されます。
) この測定方法の成功例として、長石成分を測定した結果、新潟県六日町の須恵器の出土
品が、大阪府堺市の陶邑古窯群で焼成された事が判明し、その伝播ルートも特定できた
そうです。
) 熱ルミネッセンス法を逆手に取った贋作。
この方法は絶対的なものではありません。贋作に予め人工的にⅩ線を照射し、検査を誤魔
化した事例も報告されています。
4) 光ルミネッセンス(OSL)法
鉱物結晶に光を照射した時に、波長の異なる光が放出されることを利用して年代を測定する
方法です。焼き物や堆積物に普通に含有される石英や長石結晶から、放出される光を測定し
ます。 実際の年代測定の手法は、上記TL法と同じですが、試料の採取時にできるだけ日光
などの光を受けないようにする必要があります。
この方法では、鉱物結晶が光を受けなくなってからの年数がわかるので、地中にあった発掘品や、
土壌をはじめ、各種堆積物の直接的な年代測が可能です。
5) 上記以外の機器を用いた方法。
古陶磁では何処で作られた物であるかが、判明する事で贋作を見破る事が可能になります。
昔は土の有る処に窯を築き、当地の土を使っていますので、名前と土が一致して当然です。
しかし、しばしば名前と産地が一致しない場合、「材料の元素分析法」を用いると陶磁器の
生産地を知る事ができます。「材料の元素分析法」には以下の方法があります。
① 蛍光X線分析法(XPF法)
) 原理。
試料にX線を当てると、原子中の電子が飛び出します。その空いた部分に外側の電子が入り
ます。その時その元素特有のエネルギーのX線が放出されます。
注: 原子核を中心に電子が複数の軌道を周回しています。軌道には定まった数の電子が
存在し、抜けた穴にはその外側の軌道上にある電子が、入り込みます。
) 陶磁器の場合、胎土や釉の構成元素を分析する事ができます。
特に胎土の分析から、何処の土(産地)かが判ります。
) この方法が注目される様になったのは、加藤唐九郎氏が関係したとする「永仁の壷」
事件によります。
注: 「永仁の壷事件」とは、1959年重要文化財に指定された、鎌倉時代の古陶が、
「蛍光X線分析法」によって現代の材料(特に灰釉)である事が判明し、1961年重文の
指定が取り消された事件です。
② 中性子放射化分析法(NAA法)。
以下次回に続きます。
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