鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『その男』~観客席に舞う桜吹雪②

2009-04-13 21:00:43 | Weblog
朝方、濃霧。日中は、暑いくらい・・・。

昨日の続きです。

 『その男』・・・杉虎之助(上川隆也さん)は、難産に末に、母親を亡くし、体質も虚弱で、どうも武家の跡取りには、そぐわないと、継母に冷遇され、自分の居場所を見失い、年はも行かぬ年齢で、川に飛び込んで自殺を図りますが、幕府の隠密・池本先生(平幹二郎さん)にその命を救われます。
命の恩人である池本先生の仕事を手伝うことを夢見て、日々、精進し、時勢に乗って、命をかける働きをしたいと望みますが、先生は、血気にはやる虎之助に、平凡に穏やかに、幸せに暮らせ・・・と彼を京都から遠ざけます。

友人たちが、幕末の激流の中、様々に命をかけて、自分の信念を貫くのに対し、活躍の場のない虎之介は、江戸で、鬱鬱とした日々を過ごします。

剣の技術も、志も、優しさも厳しさも、幕末という時代の中で、命を散らして言った英雄達に、いささかも引けを取らない虎之助ですが、先生の遺言とおり、時代の観察者として、只、静かに、生きて行く様子がとても、切なくて、上川さんのヴィジュアルにぴったりでした。

序盤の殺陣に少しぎこちなさがあった感じでしたが、端正な男っぷりを堪能させていただきました。

時代の波にのって、出世して行く半さん役に、池田成志さん。
上川さんと対極的なキャラクターを、とことん弾けて演じられておりました。
友人なのに、恩師の仇、そして、西郷隆盛ともに、西南戦争で、亡くなってしまいますが・・・。
一癖も二癖もあるアクのあるキャラクターを演じさせたら最高の役者さんですね。

そんな友人やモトの恋人、妻と次々と亡くして行くなか、97歳になった虎之助がみた幻。

淡々と静かに生きて行く中で、再び、戦争に走る日本を見つめながら、思いは、かつての江戸への愛慕なのか・・・。
フィナーレは、華やかに吉原の桜吹雪。

玉を転がすような声というのでしょうか・・・キムラ緑子さんの色っぽさ。
この人は、ほんとに上手い女優さんです。
尼さんになったり、お妾さんになったりと波乱万丈のお秀さん役を好演。

人の世の仕組みを知り尽くし、虎之助に、時代に流されず、個人の幸せを追求せよと望む幕府隠密・池本先生役の平幹二郎さん。
登場するたびに、安定感というか、観客に安心感を与えて、舞台の空気を変えることのできる稀有な役者さん。このひとが、出てくると何故か、安心して舞台の展開を見守れるといった気分にさせてくれます。
そのあたりが、役者としての最高の技量です。


続きは、また明日。