鼎子堂(Teishi-Do)

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『広島に原爆を落とす日』③~日本的魂の崩壊した日

2010-08-23 21:05:49 | Weblog
猛暑・・・。暑すぎる・・・今年の夏。


人類初の大量虐殺兵器を、人類で、最初に使うという『神』の仕事を担うために生まれ来た犬子恨一郎。

65年後、歴史から抹殺された犬子恨一郎を追う記者・山崎。
この両者に、何の関連性もない・・・なにか、あるのかな・・・と思ってみていたのだけれど。
生まれ変わりだとか・・・そんな因縁めいた確認の仕様のない事実は、このドラマの中では、却下されていた。そのあたり、もう少し、複雑な因縁が欲しかったと私なりにそう思う。
山崎役の筧さんは、印象が少し薄かった。

この戯曲が書かれてから、4半世紀・・・。
やはり、25年くらい前の設定の方が、自然だと思う。
無理に、現代(2010年)にする必要もなかったのではないかと・・・。
第二次世界大戦という、どうしても、動かすことの出来ない歴史的事件の時間軸が、設定されたため、他を動かすというのは、無理があった。

太平洋戦争の終末期にタイム・スリップしてしまう今井雅之さんの戯曲『Winds of God』でも、初回は、携帯電話などの小道具はなくて、ン十年ぶりに再演したときでは、シチュエーションがいろいろ変わっていた。
それをいかに矛盾なくまとめるのが演出家さんの仕事だとは、思うのだけれど。

65年前という現代での設定と40年前という戯曲の書かれた頃の設定とでは、だいぶ、齟齬がある。

犬子恨一郎と髪百合子(仲間リサさん)の娘であろう?今日子(山口紗弥加さん)も、現代の設定では、64歳でなければ、ならないし、時の首相・宗重(山本亨さん)が、現代に現れたのならば、多分110歳以上でなければ、矛盾が生じるはずである。

この首相・宗重を演じていた山本亨さんは、老獪で、俗物的な人物に描かれているけれど、このひとは、ほんとうに上手い役者さんだ。洒脱でもある。
このままだと、敗戦は、間違いない。そんな中、日本は、アメリカの51番目の州にならずに、アメリカの軍事基地を提供することによって、永遠の安全保障を取り付ける。その安全保障の中味は・・・(ネタバレになるので記述を控えるが・・・)。日本をアメリカにしないために、宗重は、秘密を抱き、生き続ける。太平洋戦争の亡霊のように・・・。

スリリングな謎解きとダイナミックなダンス、あまり必要性のないボケ?もあったりで、時間を忘れる面白さだった。

愛する女の頭上に、原爆を落とす・・・。
そして、日本の再生を願う恨一郎。

今、日本に恨一郎のような鮮烈で清しい男がいるだろうか?
たぶん、そういう日本人は、もう伝説の中でしか存在しないだろう・・・つかさんは、そう言いたかったのかもしれない。そして、恨一郎は、朝鮮人だったと・・・。

(明日に続きます)