くもりがち。
『香道』という雅なあそびがあるのを知ったのは、故・宮尾登美子さんの『伽羅の香り』という小説を読んでからで、世の中には、数々の財力なないとできないあそびがあれど、千年続く・・・そして、一般の人びとには、手が届かない・・・本当に一部のひとだけの遊びがあることを知った。
香道具のメイン・・・香木に至っては、蘭奢待・・・なる正倉院の御物は、天下人でなければ、切り取ることさえ、許されず・・・。
遙か、南洋の島々・・・熱帯から流れ着いた香木は、漂流した果ての日本の浜辺で、燃やされると、15km四方に薫香が、漂った・・・そうな・・・。
また、宮尾氏の別の小説『一絃の琴』では、子宮がんを患った義母の為に、(癌特有の匂いを消すため)絶えず、病室に香を焚いた・・・という一文がある。
いづれにせよ、生活に余力がないと、香を楽しむのは、難しかったのかもしれない。
現在では、手軽なインセンスとして、安価なものも販売されているけれど、忙しいお勤め人には、リラックスして、香を聞く・・・なんてことは、時間的にも贅沢なことだろう。
仕事を終えて、帰ってきて、食事の支度やら、家事やら・・・で、あっという間に寝る時間・・・寝ないと明日が持たない・・・なんて状況だったから・・・。
私が、虫よけ?も兼ねて、香を焚いてみると、燻す・・・というか、そんな燻す・・・というのは、秋の夕暮れを連想させるのだけれど(落ち葉焚き?)、燻された香りというのは、郷愁を誘うというか・・・(最近は、田畑の野焼き他、家庭内でのゴミを燃やす行為は、市の条例で禁止されていますかね?ダイオキシンが出るとかで・・・???)そんな感じがあったりする。
焚いているお香は、資生堂の『禅(ZEN)』。
頂き物で、10年?近く、私の部屋の押し入れの片隅で、ひっそり眠っていたのだけれど、去年の暮に、発見。
資生堂は、遙か昔だけれど、この『禅(ZEN)』』という香水を販売していて、深みのあるよい香りだった。
その香調を引き継いだのが、セルジュ・ルタンスで、彼の調香する香水には、お香が使われているものも多い。
お香は、魔を切る・・・とかの美輪明宏さんが、仰っていて、舞台の最前列で、美輪さんを拝見させていただいたのだけれど、舞台から、よい香りがしました。
視覚、聴覚だけなく・・・嗅覚も有りなのだなぁ・・・と思った次第。
良い香りは、魔を払う・・・というけれど、確かに、よい香りには、気分をリラックスさせるものもあるようだ。