久しぶりに20歳になった孫娘に会うために、彼女がバイトをしている名古屋駅前に出かけた。電車に乗るのも、繁華街を歩くのも久しぶりだ。夏の繁華街は女性たちの多くが素肌を見せて眩しい。手足はもちろん背中まで素肌を出し、人目を引く若い女性もいる。年寄りの私は見ていいのかと戸惑いながら目で追ってしまう。遅れてやってきた孫娘はすっかり夏の女子大生になっていた。
ババとジジは孫娘の誕生日祝いに、彼女の欲しいものを買ってあげる約束だ。「何がいいの?」と聞くと、「水着にしようかな」と言う。せっかくの機会なのに欲のない子だ。テレビで湘南海岸を放映していたけれど、若い女の子は誰もがビキニ水着だ。ババは無難なものを選ぼうとするので、できれば可愛い水着を買ってあげなさいと伝え、私は他の売り場を見て回った。しばらくして戻るがまだ時間がかかりそうだ。もう2回りして来よう。
食事の時、孫娘が「まだ言ってなかったけど、ボーイフレンドができた」と言う。「えっ、告白されたの?」とババとジジは興味津々で聞く。「8月1日に花火を見に行った時、付き合って欲しいと言われた」。「えっ、そうなの。それで、なんて答えたの?」。でも、よく考えてみればまだ10日間ほどしか経っていない。「デートはしたの?」。「映画観にいった。だけど眠っちゃった」。「嫌に思われてない?」。「うん、バカにされてる」。
20歳になったのに、これまでボーイフレンドができなかったことが不思議だが、ちょっと晩稲の孫娘はどちらかいえば慎重なタイプで、積極的に自分からいくことはない。ババやジジはそのくらいぼんやりしている方が可愛いのだ。男たちは美人が好きだが、それは男の性がそうさせる。そして実際に付き合い始めると、美人よりも相手がいっそう可愛くなる。私はちょっと変わった女の子を好きになる。
「パパに似てる。車が大好きで、身体を動かすことが好きで、フットサルに夢中になってる」。そうか、こんな風に時々はボーイフレンドのことを聞かせて欲しい。ボーイフレンドに会わせて欲しいような、まだ欲しくないような複雑な気持ちでいる。