書店で、タイトルが気になって買ってしまった。『老人ホテル』の帯には、「極貧人生から抜けだしたい!」とあり、「傷ついた私を救ってくれたのは、ホテルに暮らす打ち捨てられた老人たちでした」とある。303ページの長編だが一気に読めた。
作者は原田ひ香さんといい、1970年生まれとあるから私の長女と同じ歳だ。主人公を「天使えんじぇる」と名付けているし、長女は「大天使みかえる」、長男は「堕天使るしふああ」、次男は「羅天使らふあえる」、次女は「我天使がぶりえる」、三男は「亜太夢あだむ」、三女は「衣歩いぶ」、主人公は7人兄姉の末っ子である。
旧約聖書に出て来る名前を子どもにつけたのはどういう意味があるのだろう。母親は17歳で妊娠し、34歳に最後の子である「天使」を生んでいる。4人目が生まれた頃、父親は腰を痛めて仕事をやめた。母親は乳飲み子を抱えていたから働けず、以来一家は生活保護を受けて生活してきた。
いきさつは書いてないけれど、大家族で暮らす「仲良し一家さん」としてテレビで放映され、人気の番組になった。産室にまでカメラを引き入れ、リアルな出産シーンを撮らせ、母が号泣きし、父も泣き、兄姉たちも泣いて、高視聴率を稼いだ。けれど、それがために主人公は居場所がなくなり、高校を中退し家出をしてキャバクラに勤めることになる。
ひとりの老婆に出逢い、老婆を追ってビジネスホテルで働くことになる。そのビジネスホテルは長逗留する訳あり老人が何人もいて、そこで働く掃除のおばさんも高齢者だから、24歳の主人公はまたいじめられる。主人公は何とかして謎の老婆に近づき、次第に心から慕うようになる。老婆も心を許し、金儲けの方法を指南する。
そこそこに金はあればいいと思ってしまう私には、主人公の思いや老婆の気持ちが遠い存在でしかない。そんなことで金持ちになれるのと疑ってしまう。金に執着する女の逞しさをそっと見守る気持ちで読んだが、この小説が何を伝えたいのかは分からなかった。
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