午後3時半ごろ、外から砂をぶつけたような音がしたので、何事が起きたのかとカーテンを開けると雹が強い風に煽られてガラス窓を叩きつけていた。急に冷えてきたのはこのためだったのか。運動場にいた子どもたちが「ヒヤァー」と叫びながら校舎の影に逃げて行った。気温が低いだけなら身体を動かせば暖かくなる。けれど、雹を運んでくる冷たい風は防ぎようがない。
私の子どもの頃は伊吹下ろしがもっと寒かった記憶だが、それは今のような暖房がなく、着ているものも粗末だったからだろう。寒い時は母が作ってくれた綿入れの「でんちこ」を着ていたが、友だちの中にはセーターを着ていない子もいた。母子家庭で子どもの服まで回すお金がなかったのだろう。背も低く、いつも一番前の席だった。夏は何を着ていてもそんなに変わらないが、冬の寒さでは差があった気がする。
私の高校は、父も兄も通った伝統校で、夏は木綿の霜降りが制服だった。真夏になればワイシャツで通学できたが、ズボンは霜降りのままだった。木綿のズボンはすぐヨタヨタになってしまう。電車通学の男子が中心になって、ナイロン製のズボンを許可するようにと運動が起き、黒色または鼠色のズボンの着用が認められた。制服はあくまで学校が決めたもので、違反者を通学させないのは「人権侵害」に当たる。
東京都中央区立の泰明小学校が4月から、アルマーニデザインの標準服にする。泰明小学校は銀座にあって140年を迎える伝統校で、通学区域の子どもが減少し区内全域から児童を受け入れている特認校でもある。独断でアルマーニ製と決めた校長は、「子どもたちのアイデンティティを育成するため」と言う。現在の標準服は2万円を割るのに、アルマーニ製で全てを揃えると9万円近くになる。大人の背広でも2万円で買えるのに途方もなく高い。
いくら特別な地域にある小学校でも公立なのだから、悲しい思いをする児童が出るなら、もうそれは「教育の場」ではない。私の子どもの頃のような貧富の差は無くなっているかも知れないが、公立小学校の意味を考えて欲しいと思う。
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