歳を取れば、欲望は薄らいでいくものだと思っていた。実際は、78歳にもなるのに煩悩から逃れられない。夏になってきて、今日のように暑い日の女子大生は真夏の服装で通学している。短パンに半袖シャツの子が何人もいる。
昔から女性たちの素足はこんなにもきれいだったのかと、見とれてしまう。女子高生も短いスカートを翻して元気がいい。私が高校生の時も、高校の教員になった時も、女生徒たちは皆、美しい足を隠していたのだと気が付いた。
友だちがまだ現役だった頃、勤め先でとても愛想のよい女性に出遭い、心惹かれた。お茶に誘ったら快く応じてくれたので、有頂天になってしまった彼は、17歳も年下の女性を連れて、花の名所や高級なレストランに出かけ、とても幸せな日々を送った。
けれど、彼女は人妻だからどうしてもそれ以上に進めなかった。やがて10年の月日が流れ、突然連絡が取れなくなった。それを「別れのサイン」と受け止め、友だちは諦めた。「ふたりでドライブしていた時、ラブホテルが目に留まった。すると彼女、ニコリと笑って、『入りたいんでしょう』と悪戯っぽく言んだ。入りたいと言えばよかったと後悔している」。
78歳にもなって、そんな昔話をする彼はちょっと寂しそうだった。この先がもう無いと思うと、人はいっそう煩悩が強くなるのだろうか。さて、明日は井戸掘り。教え子が「無理しちゃだめですよ」と注意してくれた。大丈夫、ジイジたちは無理する前にギブアップしてしまうから。
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