平安時代の人々は人の形を作り、穢れを払うあるいは五穀豊穣を願う行事を行なっていたが、江戸時代になると人形として飾られるようになった。現在のような豪華な御所人形は、大正時代からと聞いた。姉の娘が持っていた7段飾りは、姪の子が男ばかりだったので、我が家に来て私の長女の家へと渡っていった。
こんな風に、季節ごとに人形を仰々しく飾る風習は、世界に類を見ないのではないだろうか。それだけ日本人は、一家団欒を大事にしてきたのだろう。家族の絆というか、人とのつながりを、皆求めて生きている。ひとりでは幸せとは思えない、それが人間の定めなのだろう。
村上春樹さんの『ドライブ・マイ・カー』を読んだ。アカデミー賞4部門受賞が凄く話題になっていたので、映画を観る前に小説を読んでおこうと思ったからだ。けれど、読んでみたら文庫本で僅か50ページ程の短編でしかない。映画の予告編では車の中の様子だったから、どこかへドライブする物語と勝手に思い込んでいた。
運転手の女性と俳優家業の男が車中で交わす会話が主だから、ここから脚本家はどんなドラマに仕立てたのだろうと思った。しかもテーマは人のつながり、人の心である。俳優の男は妻をガンで亡くした。妻は夫以外の男性とセックスしている。男はなぜなのかを知りたいと思い、相手の男と「友だち」になる。
この難しいテーマを、しかも車中のふたりだけの会話からどう映像化したのか興味深い。結論は小説の中で分かるけれど、映画はそれをどのように導き出すのだろう。ところでこの映画はどこで上映されているのか、調べないと観に行けない。「今晩はひな祭りだから、白ワインね」とカミさんの声、「はーい」と返事する。
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