友だちの姉さんから、「合唱部にいた」とか、「校庭で独唱したことがある」、そんな話を聞いたことがあったので、マンションのコーラスグループの発表会に誘った。結成してもう42年にもなるこのグループは、マンションの住人だけでなく、他の地域の女性たちも参加している。
平均年齢を聞いたことは無いが、かなりの歳であることは確かだ。声量は大丈夫かと心配したが、声はよく出ていた。ただ、見るからに歳を取った。会場を埋め尽くしている人も、グループの知り合いだから当然同じような年齢だ。私は知り合いが多かったので、席を立たずにジッとしていた。
「歳を重ねて輝いて」のタイトルの下、よく知っている曲が続く。途中で、「みんなで歌いましょう」のコーナーもあり、グループと会場が一緒になって、「里の秋」と「赤とんぼ」を歌った。88歳の姉さんも懐かしさに震え、一生懸命で合唱し、「とってもいい思い出になった」と喜んでくれた。
先日、無罪が確定した袴田巌さんも88歳、どれだけの年数の自由を奪われていたのだろう。刑事ドラマを観ていると、警察は犯人を探すことに必死だ。怪しいと思ったら徹底的に有罪となる証拠を探す。証拠が見つからなければ、どんな手を使ってでも自白を迫る。犯人を見つけられなければ、警察の大きいな失態になってしまうからだ。
犯人でないのに、犯人にされてしまう冤罪事件は、気の毒というより、双方にとっても悲劇でしかない。毎日毎日、自白を強要され、それでも負けずに「自分は犯人では無い」と訴え続けた袴田巌さん、それを信じて支え続けた姉さん、世の中にはこんな立派な人がいると安堵する。
帰りは、友だちの姉さんを誘って喫茶店に行った。「歌っていて、昔を懐かしく思い出した」「心が洗われた」と姉さんは喜んでくれた。歌には秘められた力がある。私はBS日本で毎週月曜日夜8時からの番組、コーラスグループ・フォレスタの『こころの歌』が好きだ。そうだ、姉さんに『こころの歌』のCDをお土産に渡そう。