短歌は、日々の心の揺れから生まれる。どんなに小さくても「あっ」と心が揺れたとき、立ち止まって味わいなおす。その時間は、とても豊かだ。歌を詠むとは、日常を丁寧に生きることなのだと。・・・
あとがきに、書かれているが、そして続けて、2020年に、突然日常が失われたと。2013年から2020年までの、足かけ八年の第六歌集である。
気に入った歌をあげときます(2020年の今年が生々しくて多いです)
2020年
トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ
外出というにあらねど化粧してメガネをはずすパソコンの前
帰宅するまでが旅ならキャンセル料発生する日が旅のはじまり
カギカッコはずしてやれば日が暮れてあの街この街みんな夜の街(「夜の街」という街はない)
2013年~2016年
無し
2016年~2019年
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
ふいうちでくる涙あり小学生下校の群れとすれ違うとき
レシピにも行間がある揚げたてのアジを浸せば鳴く三杯酢
ふいうちの「好き」を投げればストライク「ずるい」と言われることにも慣れて
好きすぎてどこが好きかはわからない付箋だらけの歌集のように
クッキーのように焼かれている心みんな「いいね」に型抜きされて
大豆から味噌を作るは忙しいことかゆとりかボーっと生きたし
地球にやさしい地球にやさしいって言うじゃない? やさしくないのは人間ですから
レシピ通りの恋愛なんてつまらないぐつぐつ煮えるエビのアヒージョ
みつからぬためではなくて見つかるという喜びのためかくれんぼ
ストライプ交わることのなき夜をストロベリーのカクテルを飲む
歌を詠むとは、日常を丁寧に生きること・・・・・。
日常を丁寧に生きて、歌を詠まなければ・・・・・。