◇『白い殺意』(原題:A COLD DAY FOR MURDER)
著者:デイナ・スタベノウ(Dana Stabenow)
訳者:芹澤恵 1995.1 早川書房 刊
舞台は米国アラスカ。極北・酷寒の地であるが著者もアラスカ生まれなので、日常のことと受け
止めているのか作品の中の描写も寒さをそれほど厳しくはとらえていない。ただしアラスカの動植
物、原始林、氷河やクレバス、ブリザードなどあまり知られていないアラスカの様子や独特の生活
様式が興味深く描かれている。アラスカは一時期ゴールドラッシュに沸いた。今でも川を浚ってわ
ずかに採れる砂金で生活の足しにしているという話が出てくる。
アンカレッジ地方検事局元捜査官ケイトはアラスカ奥地に暮らす先住民アリュート人。職務中重
傷を負って辞職。故郷のアリュート人入植地に逼塞している。
アラスカは18世紀にロシア人が侵入し、そのロシアから19世紀後半にアメリカが買い取ったが、
先住民のエスキモーやアリュート、インディアンなどの土地を一方的に占有し、先住民は一定の土
地に囲い込んだ。能力があっても教育を受けるチャンスに恵まれない先住民の悩みはアメリカ南部
のインディアンと似た状況にあるらしい。そんな中で州検事局捜査官にまでのしあがったケイトには
それなりの能力と努力があったのだ。広大な国立公園地域に事件があるとケイトを頼りにしてくる。
国立公園のレインジャーが行方不明になって、探しに来た検事局捜査官も姿を消した。かつての
上司で恋人のジャックから頼まれたケイトは、集落のただ一軒の酒場で情報を集める。そこにたむ
ろする若者や老人、国立公園内に鉱山開発をもくろむ業者、友人のアマチュア無線家、祖母に姪に
叔父さん・・・。余りにも容疑者が多すぎる。しかし聡明なケイトは独特の推理で犯人を割り出す。そ
れは意外にも…。
◇『雪解けの銃弾』(原題:A FATAL HTAW)
著者:デイナ・スタベノウ(Danw Stabenow)
訳者:芹澤 恵 1995.10 早川書房 刊
ケイト・シュガック女探偵第二弾。ケイトが住む村ニニルトナで連続殺人事件が発生。子供を含む
男女9人の村人がライフル銃で惨殺された。犯人はケイトも狙うが逆に捕らえられてしまう。
ところが弾道検査をしたところ、なんと9人の被害者の中の一人リサだけが異なった銃で撃たれた
ことが明らかになる。一体誰がもう一人の犯人なのか。五里霧中の捜査の中でリサの意外な実像が
明らかになってくる。村中の男と関係があった。そして秘かにマリファナを栽培していた。麻薬の販売
先が犯人なのか。姉のロティはその時どこにいたのか・・・。
ケイトは犯人を追ってカナダとの国境をなす海抜5700mのアンクァック峰の難所”大瘤”に向かう。
そして突如マグニチュード6.2の地震に見舞われる。氷河も氷壁も雪崩に襲われ犯人も雪崩の中
に消えた。ケイトは辛うじて助かった。
(以上この項終わり)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます