奈良県磯城郡田原本町と言えば大和盆地のヘソ。
そのまた真ん中辺りに弥生時代の環濠集落遺跡である唐古・鍵(からこ・かぎ)遺跡が
ある。
邪馬台国女王(卑弥呼)が倭と呼ばれていた日本を統治しようとする以前から「環濠集落」
の形をとっていたとされ、今も周辺は穀倉地帯として残っている。
その「鍵」地域で一番大きくて有名な神社は『鏡作神社』で
古来から鏡鋳造の神として信仰されていながら、例祭である「御田植祭」も、御田植舞・
豊年舞・牛使いという慈雨、豊作を祈る神事として有名である。
そのすぐ近く北側にある「鍵の八坂神社」と「今里の杵築神社」では6月の第1日曜日、
毎年恒例の蛇巻きの行事が行われた。
鍵では、午前中八坂神社にて稲わらで蛇をつくる。
午後からは1年の間に鍵大字内で祝い事のあった家々を、蛇を担いで訪ねる。
頭部は200Kg近くもあり、17歳の少年と当屋が一緒に担ぐのだが、とても重くて所々で
休まなければ一気に歩けるものではない。
おまけに後ろの綱を参加した全少年が頭の前進を阻むよう引っ張り合いながら道を進んで
いくので、一度に十数メートルも進めば良い方なのである。
田原本町 「鍵の八坂神社」 蛇巻き① http://youtu.be/2k7Xhyk2eik
田原本町 「鍵の八坂神社」 蛇巻き② http://youtu.be/r2gf0kbsg2U
地域を練り歩いた蛇は北中学校の前の「はったはん」という場所の大樹の根元に頭がおかれ、
胴体が上へと樹に吊るされて終わります。
一方、今里の杵築神社では、午後1時過ぎに中学生以上の男子が麦わらを束ねて、全長
18mの蛇を作る。
先ずは頭部とそれに連なる2本の縄を数本の縄を捩って作り、それから藁を組み入れながら
2本の縄を何人もの中学生以上の男子が掛け声もろとも受け渡しして蛇の体を作って行きます。
田原本町 「今里の杵築神社」 蛇巻き① http://youtu.be/SyKymj3JSVI
田原本町 「今里の杵築神社」 蛇巻き② http://youtu.be/rnAG47w0X1k
行事参加者が拝殿でお神酒を飲む間、村の参拝者にはわらの先にくくられた「わかめの味噌煮」
が配られる。
その後、数えで15から17歳の男子が蛇頭を抱え、今里の各戸を「おめでとう」と言いながら
練り歩く。広い道に至れば、「それ」との掛け声とともに、蛇体に人を巻き込む。
再び杵築神社に戻り、神社南側にある大樹に頭を上に巻き付けられる。
隣同士の集落で同じような行事が繰り広げられるのだが、
朝からと昼から、稲と麦、頭部の大きさ、気に巻きつける頭が上か下かなど、細部が異なって
いるのも面白い。
でも、行事の構成員が男子であり、旧暦の5月5日に行われる端午の節句にちなんだ行事
である。
また、やがてくる田植え時に雨が降るようにという祈りを含んでいるという点では共通の行事
なのである。