リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦の話題(1)

2006年03月23日 14時57分33秒 | 音楽系
今日はちょっとコアな話題を。

リュートの演奏家はナイロン弦などの合成樹脂弦を張ることが圧倒的に多いです。古楽器では唯一でしょう。ヴァイオリンもヴィオラ・ダ・ガンバもみんなガット弦を張っています。どうしてリュートだけ?

その理由はリュートに使う細いガット弦の耐久性の問題でしょう。ヴァイオリンやガンバはリュートよりずっと太い弦を使うので大丈夫なんですが、1弦に0.4ミリかそれ以下という細い弦を張るリュートではすぐ弦は切れてしまいます。

じゃ、切れないように太い張ればいいじゃん、というあなた。ええ、確かにそれは弦が切れる切れないという問題においては正解です。でも24本も弦を張るバロックリュートの華奢なボディはとてもそれだけの張力に耐えられません。

結局、リュートは切れやすい細い弦を張らなければならないわけです。でも昔の大家たちはどうやってたんでしょうね。ヴァイスも当然オールガットの24弦13コースのバロックリュートを使ってたわけですが、現代の現時点では実用的でないとされているガット弦でどうやって商売していたんでしょうか?

よくある説で、昔の羊の腸(あ、ガット弦は羊の腸製です)は粗食をしていて筋肉繊維がしっかりしていたから、昔は強いガット弦を作ることができたというのがあります。一見もっともな説ですが、科学的に見てあまり信憑性があるようにも思えません。あと弦のメーカーがなっとらん、という説。これもねぇ。

歴史的に多くのリュート奏者がガット弦を使っていたという厳然たる事実に対して、現代の私たちはどこか勘違いしているところはないのかと思っていたところ、小さな風穴をあける実験を行った人がいました。
(続く)