リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

江戸絵画

2006年03月27日 23時16分13秒 | 日々のこと
愛知県立美術館で、木村定三コレクションによる江戸絵画の展覧会を見てきました。
木村定三は名古屋の有名な美術蒐集家で、2003年に90歳でなくなられた方です。彼が愛知県美術館に寄贈された近世絵画を一挙に公開ということです。

久々に栄の方を歩くのでちょっと場所の感覚が不明になり、中日ビルを探してやっと位置を確認。若い頃は(なんてジジイみたいだけど(笑))あの辺りは目をつぶっても歩けたんだけどな。最近はどうも新しい建物ばかりで困る。その中日ビルも外壁の修復が始まるみたいで、足場が組んでありました。

芸術劇場がある建物(建物全体は何というんでしたっけ?)の10階まで一気にあがり美術館に到着、今までに2、3回は来たことがあったことを思い出しました。コートを預かってほしいってお姉さんに言ったら、クロークルームはない由。なんか前も同じようなことを聞いたような・・・こんな立派な建物なのにクロークルームがないなんて不釣り合い。きっと設計の段階で誰もそういうことに気がつく人がいなかったとか。情けない話ですが、公共の建物ではありがちなことです。

さてコレクションは素晴らしいの一言でした。木村さんがいかに目が利くコレクターであったかを物語るコレクションです。コレクターの趣味がいい方向に表れていて、ホントいいものよくこれだけ集めたものだと思いました。スイスのヴィンタートゥアという町にオスカー・ラインハルト美術館というのがあるんですが、これは資産家のオスカー・ラインハルトの主に印象派を中心としたコレクションを美術館に納めたものですが、(建物も彼のものでした)彼のコレクターとしての目を物語る優れたコレクションです。木村定三の江戸絵画コレクションを見ていて、オスカー・ライハルト美術館のことを思い出しました。お金が目の利く人のところに集中しているとこんなに世のためになるもんですね。

この展覧会で特に印象的だったのが白隠慧鶴の作品でした。彼は1685年生まれのお坊さんで、(お、バッハと同い年!)展示されていたのはいわゆる禅画です。白隠慧鶴のセンスがホントに自由でまるでモダンアートみたいでした。300何十年前の日本にこういう美術センスがあったというのは、日本って本当に洗練された「芸術の国」ですよ。(昔日本は神の国って言ったひとがいましたね)バッハが生まれた頃の西洋ではこういうセンスは全く理解されず、20世紀になってやっとという感じですからね。白隠慧鶴の作品がここにあるということは、まず当時白隠慧鶴みたいな感性の人がいて、それを認める人が周りにいて、それを永く保管していく人々がいて、それをコレクションに加える人がいてやっと私たちの目に触れるわけですから、かつての日本の芸術センス恐るべしですよ。(戦後はちょっとね・・・(笑))

この展覧会は5月21日までやってますので、名古屋近在の方はぜひお出かけになるといいと思います。