リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦は

2006年05月02日 12時24分21秒 | 音楽系
VISAカードの利用代金明細書が来て、見ていましたら、ガット弦の代金がでていました。うーん、6万を超えていました。ガット弦お遊び、高くつきます。(笑)

コンサートでの実用性がまだ見えないので、結局元の合成樹脂弦ソリューションに戻しました。コンサートで(あるいはコンサートの前に)使えなくなるという不安を持って楽器を弾くのは何かすっきりしません。

でも、まだどこかに突破口があるような気がして、またそのうちやってみたいです。ただ人前で弾くことが多くなってくると、そうそうは実験をしているわけにはいかないところがつらいところです。

ガット弦をリュートで使うというと、言葉で言うと単純ですが、実際はなかなか大変なことが多いです。何が一番問題かというと、「リュート用のガット弦ください」って感じで買うことができないんですね。

そもそもガット弦自体まだ発展途上で、例えばK社のリュートに使えるガット弦でセットを組んでも、低音用の巻き弦は棒振動状態で使い物になりません。たとえ、それが昔の弦の製法で、当時はそういう音がなっていたと推測されるようなものであったとしても、それは現代の聴衆には全くアピールしません。

では、べつのG社の巻き弦はどうか、ということになり、お金をかけて試していくわけです。プレーンガットに関しても同様で、A社は音程が悪いのが多いからK社のはどうかとか、調べていくと、恐ろしく時間と費用がかかるわけです。しかも弦を交換してしばらくはあまり練習ができないのです。

それでは、興味のある方のために(あまりいないでしょうけど)、実験のまとめをしてみましょう。

1.1~3コースはより細い弦を張る、(1コース0.36、2コース0.42)というコンセプトは弦の持ちという点からは○。細くなるので切れやすくなると思われがちですが、細くなると張力も減るので意外と切れにくくなる。ただ、1,2コースのピークパワーがもう少しほしいところ。それをのぞけば、音に関してはあらゆる点でナイロンを凌ぐ。ピークのパワーを上げるために、0.40を1コースに使うとどうなんでしょうねぇ。これはすでに使っている人の報告ではあまりもたないらしいんですが。そもそもその話を聞いているので、「より細く、より弱く」をやったんですね。

2.3~5コースは実用的に全く問題ありません。音色的も耐久的にも使えます。

3.巻き弦(K社のVDタイプ)で使えるのはせいぜい8コースあたりまででそれ以下の低い音はポコポコで低音として響いてくれません。これは大きな課題ですね。あとG社も巻き弦を出していますがまだ試していません。

4.オクターブ弦で使うガットは非常に良好です。

ということで、まさに人柱状態ですが、今度は予備に使っているドイツテオルボで実験を継続してきたいと思います。