リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

テオルボあれやこれや(2)

2007年07月31日 11時05分35秒 | 音楽系
でもこのヘッドまわり、強度は高くても弦が急角度でペグの方に向かうわけですから、弦のすべりが悪くなり、調弦しづらいときもあります。それでも強度優先で変更しなかったんですね。そういやボディ背面の部分もリブ(スイカを切ったときの皮のような)を張り合わせて丸くなっていて、これが楽器のホールド性を損ねています。要するに抱えにくい楽器なんですね。

でもこの形状は、箱形にするよりははるかに強度的に優れています。知り合いの製作家が、失敗作のリュートを壊そうと、リュートを腹這いにして(ちょうど掲載絵画のような感じに)踏んづけたんですが、なかなか壊れなかったと言ってました。どうもリュートは演奏する人間のことよりもその楽器が存在するための強度というか合理性を優先した楽器のようです。楽器の神様に人間が合わせるという訳です。

その楽器の神様にそむくような行為をしたのがテオルボというタイプの楽器です。その報いかリュート属はその後100数十年でヨーロッパのミュージック・シーンから消え去ることになった訳です。(ホンマかいな。(笑))もちろん、旧来のタイプの楽器もずっと作られてはいましたけどね。

で、やっとテオルボの話に戻ってきましたが、一般的に言われているのが、指盤上の弦長の2倍以上あるバス弦を持った楽器がイタリアン、1.5倍程度のものがフレンチであると言われています。元々その時代、その土地では別にイタリアンだとかフレンチだとか頭に形容詞がついていたわけではなく、単にテオルボと呼ばれていたにすぎず、別に混乱はなかったはずですが、21世紀の現代から見ると時代や土地でいろいろ微妙に異なるので、整理が必要なんですね。