リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

テオルボあれやこれや(1)

2007年07月30日 13時16分03秒 | 音楽系
私が購入予定のテオルボは、昨日書きましたようにフレンチなんですが、テオルボということばは結構混乱してます。ごく一般的には掲載した絵のように、ペグボックス(弦倉)がネックに対してまっすぐですごく長いタイプのリュートのことをテオルボだと理解していいと思います。リュートの最も標準的なスタイルは、掲載絵画にあるようにペグボックスがネックに対してかなりきつい角度で曲がっているというタイプです。(画面奥の方で腹這いになっている楽器です)

このペグボックスが曲がっているタイプは、ある意味でリュートの最も特徴的な形状であるといってもよく、親戚の楽器である琵琶も同様の形状を保っています。正倉院にある琵琶も同様の形であるということは、千何百年ものあいだリュートなる楽器はこの形状を保っていたわけですが、17世紀初めのテオルボの登場で突然その伝統的な姿の一部を捨ててしまったわけです。

このペグボックスが大きな角度で曲がっているというのは、多分製作上の容易さと強度を兼ね備えていたからこそ、ずっと変更がなかったのだという感じがします。実際、リュートのネックとペグボックスはそのまま接着して木製のピンを通すだけで接合されています。ホゾを切って組み合わせるような複雑なことはいっさいしていません。でもこの方法は非常に強度が高く、この部分が故障したという話は聞いたことがありません。