リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

懐かしの楽器たち(13)

2021年09月04日 14時17分47秒 | 音楽系
いいことづくめのデュルビースワンネックですが、実はいくつか問題もあります。音量が大きなのはいいのですが、少し大味なこと、とても華奢な作りでそれゆえ故障が多いことです。実際何回もナットより上部のひねりがある部分が折れるというアクシデントに見舞われました。弦高も上がって弾きづらくなってきました。

この楽器はパーツの接合部にマージンが少なく板も薄目なので非常に修理技術が要ります。日本人の某製作家に修理を頼んだ時はしぶしぶ受けてもらいました。でも次は割に合わないのでもう受けないと言われました。

ひねり部の修理はその都度なおしてもらってきたのですが、どうも材質的な問題があるようで、あるときとうとうもう修復不可能なレベルで折れてしまいました。そこで九州の松尾淳氏に修理というか再生をお願いするはめになりました。

某製作家が2回目の修理はもうやらないとおっしゃるので、それ以降は松尾氏にお願いしてきちんと修理してもらっていたのですが、さすがの氏もすぐにはできない、とおっしゃいました。

私は何年待っていいです。とにかく置いていきますからそのうちなんとかしてくださいと無茶ブリをして楽器を預けました。

その後松尾氏は毎日楽器を眺めてどう修理をしたらいいかずっと考えていたそうです。結局ペグはそのまま使うがナットより上部は取り換えることとし、表面板の反りは、表面板をはずして2年くらい重石(実際は石はつかっていません)の下に敷いておくことにしました。

3年くらい経って修理が完成しましたが、弦高はみごとに普通の高さになり弾きやすくなりました。そしてネックより上の部分も新しいものに取り替えられていました。音は気持ち変化している感じがしましたが、特に違和感を感じるレベルではありませんでした。その後特にトラブルはなく、2013年に欲しい方がいらっしゃったのでお譲りしました。