院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

助産師という存在

2011-06-12 09:16:49 | Weblog
 最近、4年制の看護学部や看護大学が増えてきた。これらを卒業すると、看護師、保健師の受験資格が得られる。助産師の研修もすると、その受験資格が得られる。

 従来は看護師がさらに6ヵ月研修して、助産師の受験資格が得られる。現在、助産師として働いている人のほどんどが、この制度で助産師資格を取っている。4年制大学出身者はまだ少数である。

 正常分娩にかんしては、助産師は医師の指示を必要としない。だから個人開業している助産師も7%くらいいる。昔で言えば「産婆」である。

 残りのほとんどの人が病院勤務の助産師である。病院では助産師は威張っている。(むろん、そうでない人も多いが。)免許の格は看護師より上だし、なによりも正常分娩なら医師の指示が必要ないからである。

 若年のころ、私も病院助産師に軽くあしらわれた。看護師はすべての業務に医師の指示が必要だから、若年と言ってもすぐに自分に指示を出す立場になるかもしれない。だから看護師は若年の医師でも粗末にしない。ところが助産師はそうなる可能性が低いから、粗末にする。(若い医師の一部しか産婦人科医にはならない。)

 病院では看護師と助産師の制服はたいがい同じだ。だから、患者はもちろん、他科の医師にも区別がつかない。助産師はさぞ悔しいだろう。私は制服を別にすべきだと思う。

 病院の産婦人科医はたいてい開業助産師が嫌いである。開業助産師はいつもは大きい顔をしていて、難産や異常分娩のときだけ病院に依頼してくる。つまり病院が開業助産師の尻拭いをさせられるわけである。それなら最初から病院に任せろと病院の産婦人科医は思うだろう。

 クリニックの産婦人科医が開業助産師をどう思っているかは知らない。産婦人科医は次のことをうすうす知っている。実は大病院での新生児死亡率と、クリニックでの新生児死亡率には微妙な差があることを。大病院での死亡率のほうがわずかに少ない。(地域差はあるだろうし、統計学的な有意差が出ないのかもしれないが。)

 新生児死亡率は統計をとるのが簡単である。なのに上のようなことは口外されない。理由はまあ言わなくてもお分かりだろう。

 もちろん産婦死亡率の統計も簡単にとれる。私はその統計結果を知らない。

 数年前、ある産婦人科で産婦が死亡したとき、いきなり警察が来て担当医に手錠を架けた。これは産婦人科学会で大問題となった。医療行為を警察が取り締まるなんて聞いたことがない。

 これがきっかけで、警察も医療行為に介入しなくなった。けれども産婦人科を希望する若手医師が激減したのも事実である。

 分娩は、今でも女性にとって命がけの営為なのである。助産師が少しぐらい威張っても仕方がないかもしれない。

 ちなみに男性は助産師になれない。今でも残っている数少ない男女差別の1例である。