公立病院のほとんどが赤字なのはなぜなのか?公立病院に通算18年間いた経験から考えてみる。
これは逆に民間病院はなぜ黒字なのか?という疑問と表裏である。
まず、院長が医者であるという点が他の組織と違うところだ。法律で決まっているのかどうか知らないけれども、公立も民間も院長は全部医者である。
よい医者であっても経営手腕にすぐれているとは限らない。むしろ学問、臨床共にすぐれた医者ほど経営手腕はないと言ってもよいほどだ。
それでは、民間の院長は経営手腕だけあって、学問、臨床にすぐれていないのか?と言えばそうでもない。
民間の院長と公立の院長の決定的な違いは、民間の院長には人事権があるが、公立の院長にはないということである。これだけでも、公立は相当に不利である。
さらに、大きな公立病院は3次救急を行っている。3次救急とは、緊急の大きな手術を必要とするような救急のことである。単なる腹痛のような症状を取り扱うのは1次救急である。
病院を常に3次救急受け入れ可能な状態にしておくには、膨大な金と人員を要する。しかし、国からはそれだけの財政援助はない。だからボランティアみたいなものだ。ボランティアと言って悪ければ、消防署のようなものだ。消防署は救急を行ったり、火事を消したりして黒字にしようなんて思っていない。
民間では引き受けたとしても2次救急までで、まったく救急を行っていない民間病院もある。2次救急とは入院を必要とするかどうかといった患者を扱う。
公立病院が赤字でも許されているのは、消防署が赤字でも許されるのと同じようなことである。でも、その上にあぐらをかいていてはいつまでたっても民間を凌げないだろう。
もうひとつ公立と民間の大きな違いは、公立病院は事務方がみな役人だということである。病院に異動させられた役人は、常に本庁(市役所)に目が向いている。もともとは行政マンだから病院の事務なぞ覚えたくもない。たとえ覚えたとしても、そのころにはまた異動である。次の異動先は市立動物園かもしれないし、本庁の年金課かもしれない。
だから公立病院の役人は多くの仕事を医者に振って、臨床に忙しい医者をさらにこき使う。決まり文句は「僕たちは、専門的なことは分かりませんから」だ。レセプト(診療報酬明細書)の病名と薬や手技に矛盾がないか調べることまで医者にやらせる。
民間ではそのようなことはあり得ない。まず、事務方はその病院専属で、病院外への異動がない。だから、「僕たちは、専門的なことは分かりませんから」なんて、口が裂けても言えない。病院の事務方は医療の事務部門のプロなのだ。それは事務方の誇りでもある。
こうした、いくつかの要因によって、公立病院は構造的に赤字体質から脱却できないのである。今後も一筋縄では改善できないだろう。
これは逆に民間病院はなぜ黒字なのか?という疑問と表裏である。
まず、院長が医者であるという点が他の組織と違うところだ。法律で決まっているのかどうか知らないけれども、公立も民間も院長は全部医者である。
よい医者であっても経営手腕にすぐれているとは限らない。むしろ学問、臨床共にすぐれた医者ほど経営手腕はないと言ってもよいほどだ。
それでは、民間の院長は経営手腕だけあって、学問、臨床にすぐれていないのか?と言えばそうでもない。
民間の院長と公立の院長の決定的な違いは、民間の院長には人事権があるが、公立の院長にはないということである。これだけでも、公立は相当に不利である。
さらに、大きな公立病院は3次救急を行っている。3次救急とは、緊急の大きな手術を必要とするような救急のことである。単なる腹痛のような症状を取り扱うのは1次救急である。
病院を常に3次救急受け入れ可能な状態にしておくには、膨大な金と人員を要する。しかし、国からはそれだけの財政援助はない。だからボランティアみたいなものだ。ボランティアと言って悪ければ、消防署のようなものだ。消防署は救急を行ったり、火事を消したりして黒字にしようなんて思っていない。
民間では引き受けたとしても2次救急までで、まったく救急を行っていない民間病院もある。2次救急とは入院を必要とするかどうかといった患者を扱う。
公立病院が赤字でも許されているのは、消防署が赤字でも許されるのと同じようなことである。でも、その上にあぐらをかいていてはいつまでたっても民間を凌げないだろう。
もうひとつ公立と民間の大きな違いは、公立病院は事務方がみな役人だということである。病院に異動させられた役人は、常に本庁(市役所)に目が向いている。もともとは行政マンだから病院の事務なぞ覚えたくもない。たとえ覚えたとしても、そのころにはまた異動である。次の異動先は市立動物園かもしれないし、本庁の年金課かもしれない。
だから公立病院の役人は多くの仕事を医者に振って、臨床に忙しい医者をさらにこき使う。決まり文句は「僕たちは、専門的なことは分かりませんから」だ。レセプト(診療報酬明細書)の病名と薬や手技に矛盾がないか調べることまで医者にやらせる。
民間ではそのようなことはあり得ない。まず、事務方はその病院専属で、病院外への異動がない。だから、「僕たちは、専門的なことは分かりませんから」なんて、口が裂けても言えない。病院の事務方は医療の事務部門のプロなのだ。それは事務方の誇りでもある。
こうした、いくつかの要因によって、公立病院は構造的に赤字体質から脱却できないのである。今後も一筋縄では改善できないだろう。