院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

ストレスがうつ病の原因とは限らない

2013-09-08 00:33:13 | 医療


 ブラック企業という言葉が大流行である。

 ブラック企業はロクな給料も与えずに長時間労働をさせ、若者を使い潰す。潰された者の中からうつ病になったり自殺したりする者が多発するという。

 それはそうなのかも知れないが、「長時間、大きなストレスにさらされると、うつ病になる」と理解する人が多い。一般の人は「ストレス→うつ病」という図式を描いてしまう。だが、それは間違いである。ストレスがなくても、うつ病には罹りうる。また、うつ病に似ていても、うつ病でない状態が存在する。

 昔から言われていることだが、「昇進うつ病」というのがある。会社で昇進して、はた目にはめでたいのに、うつ病になってしまう。また、まじめな主婦に多いのだが「引っ越しうつ病」というのもある。せっかく念願のマイホームを建てて引っ越しすると、うつ病を発症するのである。(発症の機序についての詳細は別の機会に。)

 うつ病に似て、そうでないものもある。例えば恋人が死んでしまった場合、残された片方は悲嘆に暮れる。一見うつ病のようにも見える。だが、これは正常な反応であって、恋人が死んだのにヘラへラしているほうが、むしろおかしい。事実このような状態には抗うつ剤が効かない。(恋人が死んだのに、飲めば元気になる薬なぞない。)

 正しくは「大きなストレスにさらされると、うつ病になることもあるが、ならないことの方が多い」となる。別の言い方をすると「ストレスがないのに、うつ病になることがある」ということもある。