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この馬券に神が舞い降りる

だから...
もうハズレ馬券は買わない。

今週の戦績

2013-04-02 23:14:36 | 競馬
修司の馬券は2レースから動き出した。
「この20万円をこの馬の複勝にすべて入れろ」
指名されたのは1番グレートエンジェルだった。
「5万円づつ4回にわけろよ」
男は急ぎ、連れの若い男に指示をだし、若い男は5万円の複勝4枚を買って戻ってきた。
修司は男の手にした馬券を一瞥もせず、そのままどこかに消えてしまった。
締め切りのブザーがなり、残された男は馬場に目をやった。

グレートエンジェルの出は決していいものではない。
中団より後方の位置のままで、レースは進み、5枠9番と8枠2頭が前を争う展開。
3コーナーから4コーナーに向かう位置で、内ですでに鞭が入るグレートエンジェル。
前の3頭に届くどころか入着も怪しい脚色だ。
「あの野郎...」
まんまと修司に逃げられたか、男はそう思った。
直線、グレートエンジェルは外に位置を移して前を追うが6番手、届きそうもない。
そう思った時だ、8枠の1頭の脚色が鈍り、アサクサライジンと並びグレートエンジェルの白い帽子が勢いを増す。半信半疑のまま声もでない。
トーコーグリーンとゼンノコンドウの2頭に大きく離された位置でアサクサライジンを1馬身ほど交わしたところがゴールだった。
4番人気のグレートエンジェルの複勝は1、2番人気との組み合わせのためか1.6倍しかつかなかった。
「思ったよりもつかなかったな」
修司がフラッと戻ってきた。
「どこに行っていたんだ、逃げたかと思ったよ」
「便所で、うんにすがって祈っていたんだよ。最後は神頼みしかないからな」

32万円の行先は5レースのガッサンプレイの複勝となった。
単勝人気は40倍を超えて人気がない。
レースは人気のヒルノクオリアが好スタート。3番手のまま4コーナーでトップに立つと後続を離して1着。ガッサンプレイが懸命に後を追い2着に。メイショウアイアンの勢いを1/2馬身1番人気のシグナルプロシードが押さえて3着。
レースが確定したところで再び修司が戻ってきた。
5万円6束と2万円の馬券は300万円を大きく上回った。

300万円を超えるとさすがにオッズを左右する。簡単には手が出せなくなる。
思案の末、勝負レースを10レースのマーガレット賞と決めた。
狙いのエリプリーズは1番人気で、単勝は4倍前後で行ったり来たりしていた。
単勝にすべて入れれば1000万は確実だ。
が、修司が指定した馬券は200万円を残して、人気を争っている12番ローガンサファイアとの馬連に100万円だった。
12番、13番の組あわせの馬連は、10万円ずつ時間と場所変え購入されて、最後の馬券が買われた時点で10倍前後を示していた。

「あっ」
ゲートが開いた瞬間、男の口からため息が漏れた。
エールブリーズが立ち遅れ、後方待機となった。
12番のローガンサファイアの位置取りも後方だ。
1400mのレースは早い流れで進み、100万の馬券の2頭は最後方のまま4コーナーをむかえた。
「川田!」
大外に出した分、距離ロスは否めない。ましてや1400mでの位置取りとしては厳しいものがある。内目を回った先頭集団の脚色は衰えない。
しかしエールブリーズのさらに外目からローガンサファイアが差してきた。
前を行くアットウィルはガッサンプレイと同じ内田博幸騎手=領家政蔵厩舎のコンビで、また連対することも考えられる。
ローガンサファイアは2kgの斤量貰ったせいか切れ味をみせる。エールブリーズも懸命に追いすがるがそれには適わない。
「川田!」
ふたたび男の叫び声。
ローガンサファイアは1馬身ほどアットウィルを交わしてゴールへ駆け込んだ。
場内ビジョンの画像は最後エールブリーズがアットウィル交わしたように見える。

スローでゴール前が映し出された。
1着ローガンサファイア、2着はエールブリーズ、3着アットウィルの順だった。
連れの若い男が歓喜するのとは別に、男は馬券を手に大きく椅子にへたり込んだ。
12番13番の馬番連勝は1030円、10.3倍だった。
100万円の馬券はきちっりと1000万円となった。

「残った200万円は、そいつの今日の駄賃だ。1日中馬券を買うのに走りまわったんだからな」
連れの若い男は首をすくめてニタっと笑った。
「残りの持ち金は、さっさと始末しろ。匿名で寄付をするといい。一番足がつきにくい。警察に『はい、この札束です』とは名乗りでないからな」
男は大きく頷いた。
「じゃぁ、こちらも本題だ。成功報酬として、真唯子の居場所を教えて貰おうか」
コメント
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