「悪魔の花嫁」 あしべゆうほ

多分、この漫画の連載が始まったのは、私が小学生の頃だと思う。面白い漫画であったので、けっこう熱心に読んでいたが、反面気まずい漫画でもあった。なにせ、私には年の近い妹が二人もいる。兄と妹の近親ものは、どうも気まずい。

妹という奴は、やっかいなもので「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と甘えられれば、兄としては応じざるえない。上の妹は、妙に男あしらいが上手く、下の妹は上には甘え上手で下にはボス風を吹かす。まったく困ったもんである。

もっとも、妹たちに言わせれば、兄の私こそ問題児の最たるものだろう。外で問題を起こすのは大概が私だったからだ。多分、私が学校の先生ともめ、大騒ぎを起こしていた頃は、妹たちにも余波があったと思う。まあ、仕方ないと諦めてもらうしかない。

ただ、いささか悔いているのは中二の冬に私が真面目っ子に転進した時に、幼馴染みたちと揉めたことだ。上の妹には、えらくショックだったらしく、こいつは真面目になることを諦めた節がある。３人兄妹のなかでは一番頭が良く、人当たりもいい出来の良さだったが、真面目になって幼馴染みと切れるのは嫌だったようだ。

私が真面目な学生に馴染む一方、上の妹は不良の道まっしぐら。気がつくと代々木の歩行者天国で「竹の子」踊っていたり、ローラー族に入って踊っているうちはいい。そのうち女暴走族にも関っていたらしい。

離別した父の前では真面目を装っていたが、ある日高校中退がばれて大騒動。逃亡先のスナックを、父の知り合いの総会屋だか右翼だかに潰されて改心。一時期は真面目をやっていたが、やはり無理だった。それでも今は３人の子を持つ母として、一番の親孝行者かもしれない。

兄と姉のドタバタを見ていた下の妹は、妙に狡賢くなり、テニスだウィンドサーフィンだと、ミーハーな遊びに走り、学校では女ボスを気取っていたらしい。一時期は証券会社でブイブイ悪徳ＯＬをやっていたようだが、なにを思ったか女性カメラマンを目指していた。でも地道な仕事が嫌でものにならず。今はお気楽主婦を満喫しているらしい。

なにはともあれ、兄とか妹とかのしがらみは、切れるものでもないし、多分ないよりはあったほうがいいのだろう。正直、家庭的な感覚の薄い私だが、血を分けた身内が世の中にいるという感覚は、そう悪いものではないと思っている。

ところで表題の漫画、結末はどうなった？手元には、いつのまにやら残っていない。どうも妹が結婚の時に持ち出したらしい。たしか、中断したと聞いている。完結したら、もう一度読んでみるかな。