ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「嘘つき病がはびこるアメリカ」 デービット・カラハン

2008-06-20 12:17:07 | 
「赤信号、みんなで渡ればこわくない」とビートたけしが嗤ったが、現在のアメリカは皆が嘘をつくという。嘘をつかなければやっていけないほどに、過酷な競争社会であるらしい。

困ったことに、嘘をついたことに、罪悪感を覚えない。このような嘘は、嘘そのものより、その嘘をつかせた環境に問題の根幹がある場合が多い。

このような環境は、多くの場合不公正を孕んでいる。アメリカの場合でいえば、社会の上位数パーセントに過ぎない超金持ち層の人間が、その政治的影響力を駆使して合法的な節税をはかり、内国歳入庁(日本の国税局にあたる)の干渉をはねつけているらしい。それゆえ、内国歳入庁は政治力がなく、知識も乏しい低所得者に対する課税を好んで行う。事実か否かはともかく、アメリカの多くの納税者がそう思っていることが重要だ。

このような不平等と不公正がはびこる社会では、多くの納税者が脱税を悪いことだと思わなくなる。税の問題だけではない。企業の経営者は、自らの利益のために嘘の決算書をつくる。それに協力する監査法人も、嘘の証明をする。アナリストはその会社の株を平然と推奨するが、裏では酷評していた事実が醜悪だ。

その結果、会社(エンロンやワールドコムなど)は倒産し、職を失った社員が放り出される。その株に投資した多くの投資家は、莫大な資金を失い途方にくれる。嘘の積み重ねが、社会全体を荒廃させる。

「ALL or NOT」勝者が総取りする国、アメリカでは勝ったものが正しい。負けたものには、なにもやらない国。いかに金を稼いだではなく、どれだけ金を稼いだかで評価される国。だからこそ、不正な手段であっても、金を稼いだ者の勝ち。

誰もが嘘をつくのが当然の国。これが今のアメリカだ。嘘をついて戦争を始め、軍備に多大な金を使い、貧乏な若者を戦場に放り出す。金になるから食料を燃料に代え、金になるから必需品(石油とか)を投機の対象とする。金を稼ぐことこそ正義、だからスクープを捏造することも厭わない、それがアメリカン・ジャスティス。

日本にもいます。儲けて何が悪いと公言し、騙して稼いでしらばっくれる。嘘の決算書をつくり、金を集め、稼ぐが勝ちと平然と嘯く。バカだね。本当に悪賢い奴らは、黙って騙し、自慢することをしない。

おそらく、アメリカは外からの攻撃で倒れることはあるまい。国内の不公正が不満を生み出し、国を荒廃させる。内側から腐っていく事実から目をそらすため、外部に攻撃的になると思われる。

建国より200年を越え、繁栄の頂点を迎えたアメリカが、今後いかに変貌していくのか。隣国としては、注意深く見守る必要があるでしょう。
コメント (8)
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