ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

天災と人徳

2008-06-18 17:02:00 | 社会・政治・一般
古来よりシナの大地では、皇帝に徳がないと天災が起きると信じられてきた。すなわち天災は皇帝の不徳であり、新しい天子が立つ契機でもある。天命思想ともいい、易姓革命(政権交代)の基盤的思想である。

アメリカの女優シャロン・ストーンが、今回の四川大地震について因果応報だと発言したことが、中国の大衆(特にネット上で)の批難を浴び、一騒動となったと報じられていた。

シャロン・ストーンがシナの天命思想を知っていたかどうか、私は知らない。しかし率直に言って、まずい発言だと思う。その発言が間違っているからではない。おそらく中国の大衆は、その発言に内心肯く部分はあったのだろうと推測できる。だからこそ、断固として否定しなければならなかった。

天命思想は、政権交代のための理屈なのだ。古い王朝を倒し、新しい王朝を建てた権力者が、自分の行為を正当化するための思想に他ならない。現在のシナの大地を支配する政権を倒す覚悟なくして、発言すべきことではない。

言論の自由が保証された国に育った人間は、得てしてそれが特別な環境であることを失念しがちだ。シャロン・ストーンがどのような思想信条から、今回の四川大地震と関連づけて北京政府批判ともとれる発言をしたのかは知らない。知らないが、やはり半端な覚悟で言うべきことではないと思う。

別にシャロン・ストーンをバッシングしている中国の大衆に同調しているわけではない。でも私自身は、天災と施政者の徳とを関連づけることに否定的だ。むしろ天災をいかに対処したかで、施政者の資質が問われると思っている。

中国に限らないが、大規模な災害に襲われた場合、政府がいかに対処したかは、時として政府そのものの信任を問われる。日本でいえば、阪神淡路大震災での稚拙な対応が、村山政権への信任を大きく損なったと私は思う。あの時の旧・社会党の代議員たちの現実離れした発言が、反対するだけで現実的な実務能力が乏しい正体を露呈させた。

災害により家族や友人を失った人には酷な言い様だと思うが、このような災害時にこそ政治の真価が問われると思う。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする