ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「バガボンド」 井上雄彦

2008-06-25 12:21:47 | 
先週末の土曜日、上野へ美術展を観に行った。当初は閉幕間近の「ダーウィン展」が目当てだったが、雑誌「ブルータス」で巻頭特集していた井上雄彦を見て、居ても立ってもいられず、「井上雄彦最後の漫画展」を優先した。

上野公園の階段を上がり、美術館に近づくと数十メートルの行列が見えてきた。嫌な予感・・・券売所に行くと、当日券完売のため入場できず。見通しが甘かったと痛感する。後二週間なので、なんとか平日に時間を作って観たいものだ。仕方ないので、当初の予定通り「ダーウィン展」を観に行く。こちらも盛況だが、なんとか入れた。

ご存知の方も多かろうと思うが、現在コミック・モーニングで連載(休載も多いが・・・)されている井上雄彦の「バカボンド」は、吉川英治の「宮本武蔵」を原作としている。

原作にしていいるといいながら、実のところ吉川版とはかなり違ってきている。独自の登場人物も多く、既に井上雄彦版の宮本武蔵と化している。

伝説の剣豪、宮本武蔵を題材にした本は数多いが、その最高傑作は吉川英治のものだとされている。私も異論はない。多くの作家が独自の宮本武蔵を取り上げているが、吉川英治のそれには及ばないと思う。

ただ、もしかしたら、井上雄彦の描く漫画版宮本武蔵「バカボンド」は、吉川版を超えるかもしれない。小説と漫画を比較するのは、あまり適切ではないと思う。私は通常、文章から想像の膨らむ小説を上に置くことが多い。絵にして描かれてしまうと、想像の広がりが制約されてしまうからだ。

しかし、井上雄彦の描く宮本武蔵のイメージは、あまりに鮮烈で、力強く、私の想像力を突破してしまった。先日の朝日新聞の記事で、某美大の先生が現代の日本で筆をとらせて絵を描かせたら、井上雄彦が一番上手いと言わしめたと報じられていた。そう、この漫画は筆で描かれている。

「絶望に効く薬」(山田玲司)のなかで井上本人が、漫画家仲間の山田に、筆で描く苦労を語っていた。ペンではなく、筆で描くが故に、陰影の深みに凄みがある。ただ、ペンと異なり、肘をつけて描くわけにいかないので、腕が疲れて肩が上がらないと井上氏がこぼしていた。

井上氏は更に語る。昨日より今日のほうが上手く描けなければ、自分が許せないと。更なる向上を目指して、井上氏は「バカボンド」を描き続ける。聞くだに圧倒される。事実、その意欲に見合う作品だと思う。休載が多いのは、多分井上氏が作画に時間をかけるからだと思わざる得ない。それだけの画力だと編集部も認めているのだろう。

なんとか、今日明日で今月の決算申告を片付け、上野へ原画を観に行きたいものだ。
コメント (4)
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