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ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

プロレスってさ スティーブ・ライト

2014-10-08 12:11:00 | スポーツ

平凡なる非凡。

見た目がプロレスラーらしくないプロレスラーだった。スーツを着て、革鞄をもっていれば立派なシティの英国紳士。穏やかな風貌と脂肪に守られた実戦的な筋肉、そして禿というには今少し毛が多い頭髪が目立つが、地味すぎて目立たない人。

英国出身で正当なレスリング・テクニックの持ち主であるのだが、地道な技の使い手であり過ぎて、得意技とか必殺技がないような印象がある。

ただ、その強さは本物であった。日本では新日本プロレスで活躍していたが、なかでもタイガーマスクとの勝負こそが、彼の実力を良く示していたと思う。

タイガーマスク(佐山)は天才肌のプロレスラーで、その表現力はダイナミックであり過ぎて、他のレスラーはペースを乱して自滅することがよくあった。ほとんどの対戦相手に対して主導権をとっていた。

しかし、スティーブ・ライトとの試合は勝手が違った。正統派レスリングの使い手であるライトは、そのプライドからか決してタイガーマスクに試合の主導権を握らせなかったように思えた。

もちろん試合に勝つのは、スター選手であるタイガーマスクである。しかし、ライトとの試合後のタイガーはどこか不満げであったように思う。タイガーのアクロバティックなプロレスにも動ぜず、あくまで自分のペースで試合をやっていたのがライトであった。

ジュニアヘビー級の体躯であったが、ヘビー級の選手と試合をしても、観客がジュニアヘビー級であることを気が付かないほど自然にリングで戦っていた。大柄な選手たちからも決して軽んじられないのは、その実力が本物であったからだと思う。

後年ドイツを主戦場にしていたため、最近のプロレス・ファンには馴染みがないのは仕方ないが、忘れ去られるには惜しすぎる選手であった。

ドイツで長く強豪として君臨していた帝王(日本では墓堀人)ローラン・ボックが、引退後のインタビューで記憶に残ったプロレスラーの一人にライトを挙げている。また新日本やUWFで活躍した技巧派の木戸修は、最も上手いと思ったレスラーの一人にライトを挙げている。

この強さの秘密は、やはりイギリスの「蛇の穴」と言われたビリー・ライリーのジムでレスリングを徹底的に鍛えていたからだろう。私はレスリングを本格的にやったことはないが、レスリング部の連中とたわむれにマットの上でプロレスごっこをやった経験からすると、引きつける力が異常に鍛えられており、重心移動に長けていた。

だから組み合うと、確実に有利なポジションを取られてしまう。そして簡単に投げられる。路上での喧嘩では、パンチは十数発当てても、なかなか相手を倒せないのが現実。しかし、投げ技ならば一発で勝敗が決まる。

さして喧嘩の強くなかった私は、柔道など投げ技の使い手とは可能な限り喧嘩を避けたものです。アスファルトの路上では、投げ技は一発で決まる文字通りの必殺技でした。日本ではイマイチ人気がないアマチュア・レスリングですが、もう少し高く評価されても良いと思いますね。

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