9月末に突如として噴火した御嶽山の報には驚かされた。
私は御嶽山には登ったことがない。標高3000メートルを超す高山ではあるが、6合目まで車で行けることもあって、若いときに行く山ではないと割り切っていたからだ。
20前後の頃は、登山こそ私の生涯の趣味だと考えて、自分なりに計画を立てていた。まず体力があるうちに登るべき山を最優先とし、次に技術を必要とする山を20代、30代前半に登ろうと考えていた。
もっとも大学4年でフリークライミングに目覚めてしまい、20代は岩壁登攀をメインにし、次に体力のいる山と考えた。逆に如何に風光明媚であろうと楽に登れる山は、中年以降で十分だと考えた。
御嶽山は、この中年以降に登ればいい山の一つであった。実際、標高のわりに楽に登れる山であるからこそ、今回の噴火で亡くなった人が多くなってしまったのが実情だろう。
楽に登れると書いたが、実際は少し登りにくい山であることも知っていた。技術的には問題ない。問題は山の土壌と岩質にあった。御嶽山は休火山であるため、火山岩が破砕した土壌となっている。つまり小さい石ころが積り重なった登山道となる。
具体的には富士山が近い。富士山も石ころゴロゴロの登りづらい登山道で知られている。別に難しい訳でもないが、あの細かい砕石が積り重なった山肌は、人間の足には登りづらいというか、登っていて楽しくない。
私としては、岩稜を登ったり、樹林帯を歩くほうが楽しい。もっとも御嶽山は山岳宗教で知られた山でもあり、案外登山道は踏み固められている。おまけに独立峰であるから山頂からの展望は抜群である。
だから、年をとってからでいいやと思っていた。もっとも何度か書いているが、二十代の頃患った難病のせいで、登山は止めざる得なくなったので、あの頃登っておけば良かったと少し後悔している。
そのせいか、御嶽山の名前は覚えていた。たしか数年前にも小規模な噴火を起こしている。もっとも本州の休火山としては、浅間山のほうが派手な噴火活動をするせいか、御嶽山はあまり警戒されていなかったようだ。
率直にいって、観光気分で紅葉と展望を楽しもうと登った普通の登山者では、休火山が突如噴火した場合にまともな対応が出来るとは思えない。少し興味をもってニュースを見ていたが、避難経路の取り方、避難時のパーティー運営とも滅茶苦茶である。
だいたいが、あの噴火による噴煙が山肌を降ってくる有様を携帯やスマホで撮影しているなんて論外だと思う。もし火砕流だったら、どうするのか。人ごとながら呆れてしまった。
もっとも本格的な火砕流だったら、ベテランの登山者でも助からない。単なる噴煙爆発だからこそ助かったとみるべきだろう。ただ山頂付近にいた人たちは、噴火により噴出した火山岩に当たったり、潰されたりして亡くなったケースもあるようだ。これは避けようがない。
私は子供の頃から危なっかしいことをよくやっていたので、その分危険に対する勘というか感性は敏感なほうだ。でも、もし御嶽山の山頂にいたとしたのなら、おそらく助からなかったと思う。
今頃になって、気象庁が火山性微細地震を事前に感知していたらしきことが報道を騒がせているが、果たして事前に噴火に関する適切な警報を出せたのか、私は懐疑的だ。せめて噴煙でも上がっていればともかく、噴火警報は登山だけでなく、地元の観光業、小売業などに多大なダメージを与えるので、どこの自治体でもためらいがちとなる。
自然現象をすべて人知で予測することなんて不可能だと思う。むしろ、自然に惧れを抱き、吾が身の矮小さを自覚する程度で十分ではないか。近年まれにみる被災者を出した今回の噴火だが、せめてもの幸いはマグマ性ではなく水蒸気爆発、すなわち一過性の噴火であったことだろう。
さて、火山列島の日本である。次はどこかな?心配し過ぎることは有害だが、注意を払うことは必要だと思います。