日本史のなかでも、織田信長ほど特異な人物は稀だと思います。
特異であり、異端でもある。元々は一地方の小大名に過ぎない。戦国時代に相応しく、実力によりのし上がった戦国大名の一人であって、それ以上ではないはずだ。
信長以前にも、少なからぬ戦国大名が名を挙げ、ある者は大領主として、また、ある者は足利幕府にその実力を認めさせた。なかには足利将軍を殺してしまった松永弾正のような輩もいる。
しかし、信長のように戦国時代を収めようとと志し、実際にそれを実行したものは皆無であった。天下布武の名の下に、日本全土を支配しようと志した戦国大名は、信長ただ一人である。戦い、破壊は出来ても、新しい時代を拓き、創造できたのは信長、ただ一人であった。
志半ばで終わった信長の偉業は、秀吉と家康により引き継がれたので、まるで当然のことのように思われ勝ちだが、決してそうではない。政治家として、武将として、信長以上の力量をもった戦国大名は、少なくなかったと思うが、信長ほど気宇壮大な志をもった戦国大名は皆無であった。
長い歴史を持つ日本にあっても、日本全土の支配者たらんと志し、それを実行した統治者は、古代の大和武尊(個人か、集団かはともかく)、天智天皇ぐらいではないか。
後醍醐は過去の権威にすがったに過ぎず、頼朝や尊氏は権威よりも実効支配を優先したに過ぎない。如何に信長が、特異であり異端であるかが、よく分かろうというものである。
そんな信長を題材に、現代人がタイムトリップして、信長と入れ替わった物語で人気を博したのが表題の作品である。元々は漫画なのだが、TVドラマ化され、映画化までされている。
正直言えば、かなり無理のある構成であり、異論も文句もある。が、信長の異端さを、明るく描いたことは、新鮮であり、新味があったと思います。