私はウルトラマンよりも怪獣が好きな子供であった。
どくろ怪獣レッドキング、宇宙忍者バルタン星人、三面怪獣ダダ。もう、名前だけで、私なんぞ、興奮してしまうではないか。
そんな愛しき怪獣たちであるが、ここに一匹、不遇を囲っている可哀そうな奴がいる。それが怪獣酋長ジェロニモンである。
このジェロニモンは、死んだ怪獣を墓場から呼び寄せる能力を持つ、いわば怪獣の呪い師である。ルックスも、その目つきの悪さ、怪しい羽、どす黒い図体と、如何にも似つかわしい。
しかし、このジェロニモンは、大舞台には上がれない不遇の怪獣である。理由は簡単で、その「酋長」という呼び名が、放送禁止用語であり、自主規制の対象であるからだ。
アメリカ原住民を、インディアンと呼んだのは、アメリカ大陸をインドだと勘違いしたコロンブスの失態であり、その意味でインディアンという呼称は望ましくない。ネイティブ・アメリカンと呼ぶことに、私は異論はない。
ただし、かつてインディアンという呼称で、新大陸の住民を呼んでいた事実は、歴史に銘記されるべきである。そうでないと、何故にコロンブスが大西洋を渡ろうとした目的が分からなくなる。
それにしたって、酋長という呼称を、放送禁止とする措置は、断固納得できない。この呼称に、差別や蔑視はないはずだ。もしあるとしたら、そう感じる人の、勉強不足、知識不足である。
酋長という言葉を、未開の部族の長だと決めつけたのは欧米の一方的な見方にすぎない。これを部族長とか首長と訳しては、ネイティブ・アメリカンのチーフの役割が伝わらない。
ネイティブ・アメリカンの社会におけるチーフは、部族の調停役、世話役であり、絶対的な権力者でも、権威者でもない。欧米的な基準で測れる首長ではない。だからこそ、チーフすなわち酋長という呼称のほうが相応しい。勝手に欧米目線で見下ろすから、差別用語だと思い込むのだ。
それを放送禁止用語として自主規制することは、断固オカシイと私は声を大にして宣したい。怪獣酋長ジェロニモン、万歳!