その意気や、良し。ただし、配慮が足りない。
週末に発表された黒田・日銀総裁の、前例なき「逆金利政策」は、確かに一定の効果が見込まれる。この政策を実施されれば、銀行はその有り余る資金を、市場に出さざるを得ない。
普通に考えれば、企業への融資の拡大であり、これにより設備投資は増え、景気刺激策となる。デフレ脱却に向けての、大きな一手である。
しかし、おそらく銀行は企業融資の拡大は、あまりやらないと思う。理由は二つある。一つは小泉・竹中政権に強要された金融庁の融資マニュアルの存在である。このマニュアルは、大企業に対しては、そこそこ有効だが、日本の企業の7割を占める中小企業には適切とは言えない代物だ。
またバブルの崩壊以降、銀行は融資の審査を、専門の関連会社などに任せ、現場の判断を蔑ろにしてきた。その結果、決算書を読む力は、コンピューターソフトに取って替わられた。銀行員が、自ら足を運び、経営者を見極めることは不要とされた。
その結果として、銀行は融資判断力が多きく減退した。大企業と異なり、中小企業融資は、経営者に対する融資であり、人を見る目が必要となる。今の銀行にそれはない。
すると、今回の日銀の逆金利政策により浮いたお金をどうするのか?
ほぼ、答は分かっている。それは投資信託の売り込みと、保険商品の販売である。今でも銀行に対する信用力は高い。その銀行員がわざわざやってきて、商品説明をして売り込んでくる。これに引っかかった方は多い。
安倍政権が、前例のない政策にGOを出してまでして、遂行した逆金利政策ではあるが、肝心の銀行は、かつての銀行にあらず。おそらく、十分な成果は出せないのではないかと、私は考えています。