ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

探偵ガリレオ 東野圭吾

2016-02-23 12:04:00 | 

透徹した論理に導かれた解答を呈示された時の快感は、たしかにあると思う。

世の中、分かっているようで、実は分からないことが多い。そんな訳の分からない世の中であるからこそ、科学的な分析と、そこから導かれる論理的な解明には、多くの人が納得してしまう。

だが、人間という奴は妙なもので、論理だけでは納得しない。

正確に云えば、論理だけでは答えは導けても、事件の解決は出来ない。あるいは、上手く解決に導けない。

事件を起こすのは人間であり、その事件は論理的に発生した訳ではないことが多い。ふとした感情のもつれとか、小さな行き違いの積み重ねによる鬱積とか、人の心の歪みが事件の背景にあることが多い。

だから、名探偵は単に優れた推理力により、論理的に事件の謎を解くだけでは、事件を解決できないと知っている。人を理解する叡智なくして、名探偵は成立しえない。

実はこれが、一番難しい。人の心は複雑だ。平静にみえて、激情が隠れていることはよくある。幸せそうな笑顔の奥に、癒しきれぬ不満を鬱積させていることもある。人の心を理解することなくして、名探偵はありえない。

探偵ガリレオこと、湯川先生は科学者として難事件を解決に導く論理的かつ科学的な思考の持ち主である。しかしながら、それだけでは名探偵になれない。人を観察し、その奥底に隠れた人の心を察する能力あってこその名探偵なんだと思う。

多分、名探偵は学校教育では作れない。観察力、洞察力、想像力が見事にバランスをとり、一見難解な事件の謎をひも解いていく。だからこそ、このシリーズは人気があるのだと思います。

コメント (2)
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