ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

租税回避地に思うこと

2016-04-21 13:14:00 | 経済・金融・税制

アメリカこそが、世界最強の租税回避国家である。

現在、世界中を騒がしているパナマ文書であるが、その舞台となっているのが租税回避国と呼ばれる小国である。他にもケイマン諸島や、ヴァージン諸島などもあるが、これらは大英帝国の元植民地である。

実は公式に云えば、ロンドンのシティ特区こそが、世界最大の租税回避地であるとされている。だが、近年はアメリカこそが、もっとも厄介な租税回避地であるとの意見が散見される。

実は私もそう思っている。アメリカは覇権国であるがゆえに、政治、軍事、経済などでも主導的立場にある。そのアメリカの一部の州では、カリブ海の租税回避地に負けず劣らずの、一見合法、実は租税回避行為容認の州法がまかり通っている。

悪名高いのは、デラウェア州であり、投資組合などを活用した租税回避行為を適法化している。ややこしいのは、アメリカ政府そのものは、表向き租税回避行為に対して批判的な姿勢をみせているからだ。

なにせ、アメリカは合衆国であり、各州政府の権限が強いうえに、大量のページ数と、複雑な構成による税法と、それを余計にややこしくさせる弁護士軍団の巣窟でもある。

おかげで、世界各国の政府は、このアメリカの州がらみの脱税(みかけ合法ですけどね)行為の横行に頭を悩ませている。お気づきの方もいるだろうが、あのパナマ文書にしたところで、アメリカの主要政府要人の名前は表に出てこない。これを怪しいと思わない人は、少しマスコミの報道を疑ったほうが良い。

なにしろオバマにせよ、クリントンにせよ、アメリカの歴代の主要政府関係者の多くは弁護士出身であり、節税のノウハウに長けているのは周知の事実だ。だが、アメリカは先進国の中でも、特に脱税に厳しい国でもある。

にもかかわらず、アメリカこそが租税回避のノウハウが、最も氾濫している国である。特にアメリカの富の過半を握るとされるスーパーリッチと称される桁違いの富裕者たちは、合法的に節税に励んでいる。

かつて、アメリカの中核を占めた中産階級は、自ら納税者であることを誇らしげに語り、政治に口を挟んだものだ。その中産階級は、今や絶滅危惧種であり、富裕層と貧困層に二分化されているのが、今のアメリカの現状である。

だからこそ、今回のアメリカ大統領予備選挙において、実績あるプロの政治家であるクリントン女史や、クルーズ上院議員は苦戦し、代わって素人政治家丸出しのトランプや、反主流どころか、泡沫候補に過ぎなかったサンダース上院議員が躍進してしまったのだ。

権力者が、その権勢の根幹である政府の仕組みを阻害することが続くと、その国家は滅びの道へ歩んでいると歴史は教えてくれる。

これは、古今東西、ほぼ変わることのない、数少ない真理だと私は考えている。現在のアメリカは、その国富の7割ちかくを5%未満のスーパーリッチが握っているとされている。彼らの議会、法曹界、そしてマスコミに対する影響力は凄まじい。

アメリカが独裁国家ならまだしも、自由と平等を掲げる民主主義国家である。最大多数の最大幸福の原理に基づき、有権者の多数の意見を反映させた政策が、アメリカの基幹であるべきだ。

しかし、現実にはワシントンにはびこる政治のプロたちが政治を仕切る。多くは弁護士上がりか、大規模弁護士事務所を顧問に抱えた法律の専門家である。草の根選挙を勝ち上がってきた大衆の意見の代表者である議員たちは、この法律のプロたちに絡め取られて、気が付いたら民意から遠く離れた政策に加担している。

アメリカは、その植民地からの独立戦争と、南北戦争を経て大きく変質した。そして今、第三の変質の時期を迎えているのではないかと私は考えています。願わくは、それが亡国の途でないことを祈らずにはいられません。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする