雰囲気というか、空気ともいうべきか。
日本人は、とかく雰囲気に流されがちだ。故・山本七平氏が、この日本人の気質について指摘しているが、今がまさにその状態だと思う。
来年4月に予定されている消費税の税率アップと軽減税率制度であるが、いつのまにやら延期が当然との雰囲気に染まっている人を散見するようになった。
景気の低迷を受けてのものであり、今年夏の選挙に向けて、民意に敏感な政治家が先走った面もある。安倍総理は、未だ直接言及はしていないが、報道等を読むと、既に気持ちは増税延期に傾いているかのようである。
それに対して、財務省は表だっての反対はしていないが、息のかかった評論家やらマスコミやらを使って財政危機をアピールして、消費税の増税こそ冷静で、客観的な結論だとの雰囲気を造ろうと躍起になっている。
何度も書いているが、私は21世紀の日本の税収の柱は、消費税のような大型間接税が相応しいと考えている。少子化と、高齢化社会を迎えつつある日本では、儲けに対する課税よりも、流通段階での課税のほうが実態にあっていると判断しているからである。
少しだけ説明すると、高度成長期のように人口も増加し、経済活動も右肩上がりであるならば、所得(儲け)に対する課税(法人税、所得税)が税収の柱であるべきだ。
しかし、子供も減り、高齢者が増え、人々の経済活動も労働の対価(所得)からではなく、蓄積された資産の運用によるようになれば、大型間接税による税収の割合を増やしたほうが、実態社会に合っている。
今の日本が、まさにその段階に差し鰍ゥっている。だから、本来は、消費税の増税は望ましいかたちだと私は思う。
だが、今回の消費税の増税には否定的とならざるを得ない。それは先の消費税増税時に、財務省が誤魔化しをやったからだ。大型間接税を増税する以上、直接税(法人税、所得税、住民税)は減税されなくてはならない。
ところが、財務省は、大企業向けに法人税の現在にだけ応じた。個人の所得税、住民税は減税しなかった。必然的に個人にとっては、増税だけであるからして、財布の紐を締めざるを得なくなった。
それが個人消費の減少という形で、景気を直撃した。いわば財務省の判断ミスである。その反省もなく、ただ、ただ、予算確保のためにだけ消費税をアップさせる政策に、個人が反対するのは当然すぎる結論である。
私は安倍政権に対する評価はあまり高くない。民主党政権よりも、まだマシだとのレベルに過ぎないと思っている。アベノミクス最大の特徴は、大企業と投資家を優遇していることだ。その反面、個人や中小企業には冷淡である。
だが、民意に耳を傾けない民主党政権と異なり、多少は民意を気にするのが自民党のいいところだ。これが民主党(民進党でも同じこと)だと、財務省のいう事は聞いても、民意は自分たちを支持するべきものとの思い上がりがある。
だから、消極的な意味で今の自公政権を支持せざるを得ない。
その安倍政権は、間接的に消費税増税に反対の世論を作ろうとしていることは、この半年あまりの姿勢から読み取れる。一方、反撃しはじめた財務省も、消費税増税肯定の世論を作ろうと画策している。
いずれの陣営も、雰囲気というか空気というか、曖昧な世論形成に終始して、肝心の中味については棚上げしている。それでいいのか?
日本人は普段から、お上頼りの傾向が強く、高齢化社会に対しては、政府の手厚い保護政策を求めている。だとしたら、大型間接税は適切な税制だと思うが、その導入には、直接税の減税が必要不可欠だ。
直接税の減税は、投資を呼び込むし、海外からの労働力輸入(既に現実だ!)にも対応しやすい。だが、詳細を議論して詰めねば、拙速となり、後々に禍根を残す。その議論は、今こそ必要ではないのか。
自民党や財務省の権力争いは致し方ないけど、その手段に成り下がっているマスコミには猛省を求めたいですね。