素直に楽しんでは、いけない作品だと思った。
肉食動物も草食動物も、みんな仲良く暮らす理想の世界ズートピア。そこでウサギ初の警察官となったヒロインと、詐欺師の狐のコンビがズートピアをパニックに追い込んだ事件を追いかける。
もちろん、結果はハッピーエンド。夢は必ず叶うと誇らしげに歌い上げられる。
そんな作品なら、取り上げる気はない。それほど単純ではないからこそ、この作品は面白い。映画を観ているうちに、自然と気が付くのは、人種差別や偏見が、この作品の根底にあることだ。
公にはいけないことだとされる差別や偏見が溢れている現実に、傷つき、夢を諦める人は実在する。か弱いウサギの警察官なんてありえないと、端から決めつける警察署長。狐は狡賢いと決めつけて、チャンスすら与えようとしない善良な市民たち。
その冷たい、残酷な仕打ちは心を傷つけ、心を歪めてしまう。比較的人種差別に遭遇することが少ない日本にだって、似たような偏見、差別は必ずある。
この映画は、子供が観ても楽しめるように作られた娯楽作品である、が、従来のディズニー映画とは一線を画すのは、単なるハッピーエンドではなく、考えさせられるところだろう。
親子で観て、いろいろと話し合って欲しい映画。なかなか良かったと思います。