ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

銀河英雄伝説 原作・田中芳樹 作画・藤崎竜

2016-09-16 13:05:00 | 

ネタが尽きたら、過去の売れ筋を持ち出す。

ここ数年、田中芳樹の小説の再販、漫画化が相次いで行われている。表題の作品もその一例である。田中芳樹の出世作であり、最大のヒット作だと思うが、過去に道原かつみが漫画化しているのを知っていたので、私の印象は悪かった。

田中芳樹が売れ出したのは、1980年代のことである。この「銀河英雄伝説」を始めとして、「タイタニック」「アルスラーン戦記」「群竜伝」「地球儀の秘密」など多くのシリーズものを出している。そのいずれも大ヒットをかましているのだが、青少年向けのSF、ファンタジー作家の印象が強く、文壇での評価は芳しいものではなかったように思う。

だが、古代シナの名作を現代語訳で出した「隋唐史演義」「海嘯」「岳飛伝」などが評価され、文壇での評価も高まった。しかしながら、昔からの愛読者には評判が良くない。

当然であろう。「銀英伝」こそ完結しているが、アルスラーン、タイタニック、群竜伝は未完結であり、時折思い出したように続編が刊行されている。あまりの遅筆ぶりに私なんぞ、買う気がなくなってしまった。読者をバカにするなと言いたい。

まったく作品を書いていないならともかく、連載中の作品を放り出して、他の作品を、しかもお手軽、気軽に書いている観の強い作品(例えば薬師寺涼子シリーズ)を新たに出す節操のなさが嫌なのだ。

ところが不況風に吹かれている出版業界では、この遅筆の作家を放り出すことは出来ない。なにせ新作を出せば、必ず売れるからだ。それでも、その肝心の新作は滅多に出ない。

そこで思いついたのが、過去のヒット作を表紙を新たにして再出版することだ。幸か不幸か、出版業界の稼ぎ頭であるライトノベルは、最近勢いが衰えている。ラノベの大家である田中芳樹を読んだことがない若い読者も増えている。

だからこその再販戦略であろう。そんな訳で表題の作品が、週刊ヤング・ジャンプ誌に出た時の私の印象は最悪であった。

今更、なんだよ、それも藤崎かよ、と。

でも、あの藤崎なんだよね。「封神演義」なる古代シナのファンタジーを見事に漫画に仕立てた、あの藤崎竜である。小野不由美の「屍鬼」の漫画化にも成功させた、あの藤崎である。

最初の印象は最悪ながら、私はちょくちょくチェックしていた。そして認めざるを得ない。こりゃ、道原版を越えた傑作になり得ると。漫画でも、アニメでもあまり印象に残らなかった脇役を見事に描き出し、それでいて主役たちをも光らせている。

本当は、双璧の2人が出るまで評価は差し控えるつもりであったが、今週号の出来が良かった。原作にもなかった場面を描き、ラインハルトを見事に光らせた。これは、今後とも期待できそうだ。

コメント (5)
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