ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

紳士同盟 小林信彦

2016-09-14 12:01:00 | 

なぜだか知らないが、日本という国は詐欺師に対して甘い。

どうも、騙す奴は悪いが、騙される方も悪いという歪んだ価値観が、詐欺犯罪への甘い処罰の根底にあるようだ。

騙されるのは、欲があるからであり、そこを付け込まれたのだから、騙される方にも責任はある。これは近代法が明治時代に導入されて以降、法曹の世界では常識となっている。

果たして、本当にそうなのだろうか?

私は以前から疑問に思っていた。誰にだって欲はあるし、その欲を如何に利用するかが商売であることは承知している。では、詐欺と適法の境界線はどこにある。

半世紀以上、生きてきた私だが、未だにこの詐欺と適法の境界線が理解できない。曖昧であるのは致し方ないが、理解しがたいのは、騙される方も悪いとする価値観である。

一理あるのは認めるが、それにしたって日本の刑法は詐欺犯罪に対して甘すぎる。この詐欺犯罪に対する甘さが、悪辣な詐欺を横行させる土壌になっている。

それは詐欺犯の再犯率が異常に高いことからも分かる。

詐欺で刑務所に入れられても、短期間で出所するケースがほとんどで、出所した後、彼らは再び詐欺に手を染める。得られる利益に対して、その処罰が甘すぎるのだから、ある意味当然の判断であろう。

又聞きの話ではあるが、ある詐欺師が東京郊外に住むある老人を詐欺にかけて、かなりの金額を騙し取ったことがある。その詐欺師は、それが違法だと知っていたが、警察に捕まってもたいした処罰にならないと、多寡をくくっていたようだ。

その詐欺師にとって誤算だったのは、その老人の息子が裏社会の人間であったことだ。いわゆる広域暴力団の組長であったため、父親を騙した詐欺師に対して、その息子が下した処罰は過酷なものであったらしい。

私も詳しくは聞かなかったが、その詐欺師が二度と詐欺に手を染めることはないと断言出来るほど、厳しい処罰であったらしい。義絶された不詳の息子であったが、組長としての面子もあり、騙し取られた以上のものを奪い取ったとのこと。

その老人は縁を切ったはずの息子の親孝行に、かなり複雑な気持ちであったらしい。でも、その詐欺師に対する処罰は、警察に任せるよりも、息子に任せたほうが適切であったと考えていたようだ。

おそらく違法なことなのだろうけど、私も聞かなかったふりを平然としたのは、現行の詐欺犯に対する処罰の甘さへの不満があるからだ。なぜに裁判所に代表される法曹界が詐欺に対して甘いのか、私は未だに理解できない。

ところで、表題の作品は、その詐欺師たちの痛快な犯罪を描いている。私は詐欺が嫌いなので、好きな作品ではないが、今読み返しても面白い点は評価できる

。昨今、ほとんど目にしなくなった小林信彦の小説だが、この夏の書庫整理で見つけ出して、ついつい読み出してしまった次第です。

コメント
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