これほど暗い銀座の夜は、あの東日本大震災直後の計画停電の時以来だ。
安倍首相が緊急事態宣言を出し、小池都知事が飲食店などに営業自粛を求めた日以降、一気に夜の営業を止める店が増えた。その少し前から、自主的に営業時間を短縮する店もあったが、宣言以降は加速度的に増加した。
おかげで綺麗な満月を見ることが出来た。良かったと云えるのは、あの月夜の輝きだけだ。
ここ数日、顧客からの電話を思い出すと頭が痛い。政府からの営業自粛の要請は、中小とりわけ零細事業者をどん底に貶めた。命の重みと、金の重さを秤にかければ、当然に前者の重みこそ重視すべきである。
だが生きていくためにはお金も必要だ。このことが安倍政権には分からない。まったく庶民の危機感をくみ取っていない。もちろん政策を提言している霞が関のエリート官僚こそが、その分からなさの原因である。
彼ら官僚は、景気が悪かろうが、毎月必ず給料が振り込まれる。官僚に限らず大企業も同じであろう。しかし、中小企業は違う。売上=給与の原資である。営業の自粛を強要されれば売り上げは下がる。つまり給与の元が減る訳だ。
だからこそ中小企業は給料が払えない恐怖に怯える。先週以来、休業どころか閉店が相次いでいる。従業員600人を全員解雇させたタクシー会社が報じられていたが、その気持ちが痛いほど分る。失業手当のほうが確実だからだ。
中小企業では従業員は人材というよりも人財である。人手がなければ仕事は回らない。その人手に払うお金がないことが簡単に予測できる以上、迷惑かかる前に店を閉じる経営者の決断は自然なものだ。
今月一杯、飲食、サービスなどの業種では営業再開は望めまい。戦後最大級の不況の到来になるやもしれぬ恐ろしさが、明日は我が身と私を怯えさせる。
こんな時ほど冷静に物事を見なければならない。
実はこのご時世に儲かっている仕事もある。例えば生鮮食品を扱っているスーパーなどは、もう値引きセールなんて必要ない。店さえ開けておけば、客には不自由しない。運送業も同様で、宅配などを多用するせいで、人手不足に陥るほど好調だ。ただ、従業員の感染拡大だけが怖い。
新型肺炎の終息が確認できれば、一気に景気はある程度急反転することは分かる。問題はいつ終息するかだ。
治療薬やワクチンなどの対策がいつ公表されるのか。それ次第だと思うが、それまで不況に耐えられるのかと不安の種は尽きない。
以前から書いているが、安倍政権は庶民の意向をくみ取ることが下手くそだ。ドブ板を踏んでまでして有権者の元を訪れるような気持ちがない。どこぞの調査会社のレポートを読んで納得しちゃっている。それじゃあ世間の動向なんて分る訳がない。
そして野党は相変わらず自分たちの正しさを主張することに熱心で、有権者の気持ちなんか興味がない。正しいはずの自分たちを、有権者がなぜ支持しないのか、相変わらず分かっていない。
下降まっしぐらの経済数値よりも、政治の低迷ぶりにこそ腹が立つ今日この頃です。