硬くなったパン、どうしていますか。
最近のパンは、添加物が優秀なのか、あまりパンが固くなることはないみたいです。でも、私が子供の頃は、食パンでさえ固くなることが珍しくなかった。まぁ、固くなる前に黴が付くのが早いのですが、冷蔵庫に入れておけば黴はある程度防げる。ただし、その場合、パンが固くなってしまう。
硬いパンは美味しくない。でも工夫次第でなんとかなる。一番簡単なのは、蒸し器に入れて蒸気で柔らかくすることだ。食パンならば、これが一番簡単。しかし、相当に硬くなっていたり、黴がしつこくついているパンは、これではダメだ。
母は包丁で叩き割り、小鍋に入れて牛乳と砂糖、バニラエッセンスなどを加味して即席のおやつにしてくれた。たしか砂糖ラスクにしてくれたこともあるし、一晩溶き卵に漬けてフレンチトーストにしてくれたのも楽しい思い出だ。無駄なく食材を食べきる智恵だと思っている。
ところで20年以上前だが、当時ベルギーに駐在していた友人夫婦の元を訪れた。ベルギーはフランス料理とドイツ料理の双方の影響を受けたせいか、グルメの国として知られている。でも私に言わせれば、グルマン(大食)の国である。コース料理なんて、前菜の段階で満腹になりそうなボリュームにめげた覚えがある。
友人宅に泊まったのだが、なにやら朝が異常に早い。まだ5時だというのに、着替えて外に行こうとするから、どうしたのかと訊いたらパンを買いに行くという。なんでも当地のパンは厳しい規制があり、柔らかさを保つような添加物は認められないそうだ。
だからパンはその日に食べる量を、その早朝にパン屋で買っておく。早朝に買ったパンは、その日のうちに食べないと、翌日には硬くて食べられないそうだ。妙に思い、蒸かせばいいじゃないかと言ったら、夫婦で顔を見合わせて黙っている。
ん?なんだ、この空気は。
地球を半周回って久々にあった友人である。いちいちツマらんことで喧嘩するのも馬鹿らしいので、その場は流した。どうもこの家庭では、蒸しパンという概念はないらしい。しかし、まぁ余計な添加物を許さないのは、パンに拘りのある国として分からないでもない。
ただ正直言うと、添加物がないパンは少し旨味に欠けたように思えた。黙っていましたけどね。食生活というか食事の習慣は、人々の暮らしのなかでも最も頑固な部分なので、この点に関しては議論などは避けるようにしている。
余談だが、私は固くなっていないパンでも蒸すことがある。冷蔵庫から出したばかりのバターは固く、なかなか上手くパンに塗れない。オーブントースターで軽く焼いてバターを塗りやすくしても良いが、蒸すことでフカフカにしたパンにバターを挟んで食べるのも美味しい。
私は好きなのだが、きっと蒸してフカフカにしたパンなんて気持ち悪いと思う人も一定数いるのでしょうね。