中毒性があるから、あまり読まないようにしている作家が西尾維新だ。
でも最近のヒット作である「化物語」シリーズは読んでいない。中毒性が薄いというか、初期の不思議な文章が普通の文章に変わってしまい、それが物足りなく感じるからだ。
実際、デビュー作の「クビキリサイクル」に始まる戯言シリーズの異常で異様で異質な文章は凄かった。あまりに異相で異端で意外な内容に呆れを通り越して感心してしまった。
ミステリー地味てはいるが、内容は娯楽小説である。当時、出版社は「青春エンタ」と宣伝していたと記憶している。
私は気に入った本は、幾度も繰り返して読む癖がある。一番頻度が高かったのは吉川英治の「三国志」で、次点が田中芳樹の「銀英伝」である。おそらく三位に入るのが「戯言シリーズ」だと思う。
ただ、私は戯言シリーズを読んだ後は、鴎外や芥川、太宰などの練達の文章を読んで、脳をリハビリする必要があると考えている。そうしないと、日本語を書く時のリズムが崩れ、論旨が後戻りして、明快さが立ち眩みを起こすが如き、変な日本語を書いてしまうからだ。
なれば、読むべきではないと思わないでもないが、妙な中毒性があり、西尾維新を読みたくなることがある。ここ数年は我慢していたのだが、なんと戯言シリーズの主人公、戯言遣いと青色サヴァンの一人娘が主人公の新作が出てしまったので、私の苦悩は飛躍的に高まった。
買うべきか、無視するべきか。3か月ほど悩んで、ついに買ってしまったよ・・・
予め警告しておきます。化物語のような近年の作品しか読んでいない西尾維新読者はもちろん、戯言シリーズをまったく未読の方は手を出さないほうが無難です。訳わからん羽目に陥りますから。
なにが「首を洗って待ってたかい」だ。こちとら首を長くして待っていたんだぞ。まったくもう。