
妄想、中途半端。
地球に危機が訪れようとしていた。そこで最も近傍の、人類が生存可能な星の調査をすることになったが、誰を送るかということで議論は沸騰し、計画は頓挫しかけていた。全てが順調に進んだとしても、帰ってこられるのは100年後の地球である。それを考えれば、安易な人選は許されない。
応募者はいた。しかし彼らは難病を患っていたり、現生逃避を妄想する類の人たちであって、重要なミッションを課せるには二の足を踏みたくなるような人ばかりだった。
この計画を進める国際委員会には、ある候補者たちがいた。ノーベル賞級の優秀な科学者やオリンピックで活躍したスポーツマンであったが、彼ら、彼女らは宗教的信条により大罪を犯し、極刑を待つ身であった。
いくら人類の危機とはいえ、そういう人たちを利用することが果たして可能なのか、許されるのか・・・、というような妄想の広がるのをかろうじておしまいにし今、現の朝を迎えた。
ありがとう、宇宙船「かんと号」。また、現実の地球に戻ってきた。昨夜は牧場に泊まった。鳥の声が聞こえる。白樺の芽吹きも始まった。ここは本当に静かで、美しい。もうすぐコナシの白い花が咲き、クリンソウの花が森を飾る。山桜は薄桃色の清楚可憐な花を咲かせた後、今は赤茶色の若葉が他の木々の緑と絶妙な対比を見せている。こういう妙なる自然の演出を見ることができるのは、1年のうちの限られたわずかな期間だけだ。ゆるやかに時間の流れるここは天国だと言ってもいい。
E氏は昨日の午後テイ沢へ行くと言って出掛け、そのままヒルデエラ(大阿原)から程久保を経て釜無山まで行き、帰路は入笠の山頂を踏んで帰ってきた。これが正しい中級山岳の楽しみ方のひとつの典型ではあるが、出発時間は誰にでもお勧めはできない。因みにE氏は77歳。脱帽。
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