1羽の大きなカラスが柿木に来ている。嘴で枝を加えては、木の上で不安定な動きを見せながら何かしている。まさか、そこに巣でも作るつもりではないだろうが、まだ分からない。あんな大きなカラスに住み着かれ、その上幾羽もの子ガラスでも生んだ日にはえらいことになる。しかも、あのカラスだけでなく、そのうち仲間までがお誂え向きの木だと真似をすれば、それこそカラスだらけになってしまう。
あと1ヶ月と少々で上の仕事が始まれば、この家は留守がちになり、そうなればカラス共は住人のいないことをよいことにして何をしでかすか予想もつかない。となれば、やはりあの柿の木は伐るしかないのかと心を決めかけた途端に、まさかこっちのそんな気持ちが届いたはずもないが、どうしたことかそれまでの努力を投げ出し、カラス奴は急に飛び去った。
昨日は4月半ば、いやそれ以上に暖かだったらしい。きょうの風は冷たく、昨日ほどの陽気とも思えずにいるが、どうだろうか。少なくも、どこか外へ出ていく気にはならない。
ここの天気も気になるが、上の小屋の屋根に積もった雪のことを心配している。前回行った時は、日中でも気温が低くかったせいだろう、軒先にはまだ氷柱(つらら)もできていなかった。それが気温の上昇に伴い雪が融け出すとその水が屋根をつたい、氷り付いていた雪を全層雪崩のように落下させかねない。
以前にも雪の多かった年にそんなことがあって、小屋の雨戸と窓ガラスが何カ所も壊されたり割れるという被害があった。今週末には天気も崩れるようだし、そろそろ雪ではなく雨でも降れば、屋根の雪はさらに自重を増やし落ちてくる。
この小屋の建設に関わった人も、そんなことは知らない。冬の牧場に雪が積もることくらいの知識はあっても、実際の状況を想像したこともなければ、関心もなかっただろう。屋根の傾斜を見れば、そういうことについての配慮が全くなされていないことがよく分かる。そして、小屋は人知れず幾冬もいくふゆも耐え、痛みを深め、それを増やしてきた。
時代から取り残され、忘れられかけた小屋が不憫に思え、またそれだけに愛着もある。1泊4000円(前年度利用者には割引あり)、ガス、冷蔵庫、その他の炊事用具を自由に利用できる山小屋など、他に聞いたことがないと自賛しているのだが。
本日はこの辺で、明日は沈黙します。