入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「春」(14)

2022年03月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 咲き出したばかりの梅の花に霙雪が降っている。上は当然本格的な雪降りだろうから、これでまた牧場の門は固く閉ざされてしまう。気温は低くないからそのうちに雨に変わり・・・、と思いながらカーテンを開けたら、まだ白いものが激しく降っている。積もるまでには至らぬも、それでも庭のそこかしこがうっすらと白くなっていて驚いた。
 クマだかカエルを真似ていまだ冬眠中らしく、すっかり気配を絶ってしまったあの人の好きな言葉、「老人の元気、春の雪」ではないが、去っていく冬の切ないあがき、さながらこの雪もそんな経緯を辿るだろう。一冬愛用した毛糸の帽子を被って、見送ってやることにする。



 諦めかけていたカタクリが一株だけは無事だった。いや、もう一株も小さな芽を出し始めている。隣家のはすでに花を咲かせたというのに、わが家のは随分と晩生(おくて)で、毎年気を揉む。
 昨年、新たに3,4株植えたはずだが、今のところはたったこれだけで、後は続かないかも知れない。あんな灌木が生えた山の中よりか、ここの方が余程周囲の状況も良くて大事にしてやれると思ったのだが、それは人の勝手な判断で、馴染んだ土や環境の方がやはりいいのかも知れない。
 このカタクリの群生を初めて目にした時は、てっきり誰かが植えたのかも知れないと思ったほどで、まさしく自然の花壇と呼ぶに相応しかった。しかしそれから数年の間にすっかりと環境、様相が変わってしまい、数年して久しぶりに訪れた時には場所の特定にさえ手間取ったほどだった。
 あのようになってしまっては早晩絶えてしまうだろうと、ここ何年か幾株かを里におろしてみたのだが、それでもあの生まれ育った土にはかなわないようだ。いくら大事にしてやっても里親には懐かず、実の親を恋しがるならそれも仕方のないこと、今春もあの峠を訪ねはするが、余計なことはもうしないつもりでいる。

 桜の花は短命の象徴のように言うが、梅の花の方がその散りかたはもっと呆気ないと思う。この花は、咲くか咲かぬかの微妙なころのその蕾の白さが特に気高く、多くの固い蕾に混じって控え目に二、三輪咲き出したころが見るのに一番適している。今がまさにそんな時で、そこに降る思いがけない春の雪をさて諒とするか、まだ決めかねて眺めている。
 昼近くなっても雨にはならず、雪はまだ大きなボタン雪になって降り続けるようだ。
 本日はこの辺で。
コメント
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