寒いはずで、今朝外に出たら地面は凍っていた。一度春の陽気に味を占めると、この名残の寒さが身に応える。その寒さのせいでか今朝は早起きしたが、いつも聞こえてくるヤマバトの声が一度もしなかった。ボケの花の開花もこれでまた遅れるだろう。
牧場の小屋には、食べる機会を逸した古米がまだ残っている。古い米は味が落ちると聞いているが、その昔は、米一粒でも粗末にしたら目が潰れると言われたほどで、さすがに目は潰れないにしても、さてどうしたらよいかと気になっていた。ある時そんな話を友人宅でしたら、彼の奥さんが混ぜご飯にしたらどうかと言ってくれた。日本酒を盃1杯入れて炊いたらどうかと考えていたが、さすがに主婦だとその案に感心した。
また一昨年、友人から新米と一緒に貰ったもち米の扱いにも困っていたら、別の友人が米と混ぜて炊けばいいと教えてくれ、ついこの間までそうしていた。このもち米をくれた年下の友人は昨年亡くなってしまい、彼を惜しみ、その厚意に感謝しつつ、無駄にしないで済んでほっとしている。
牧場の仕事が始まっても、すぐに生活を上に移すわけではないが、この頃は16年目の牧守の仕事ばかりか、山の暮らしもチラチラと意識するようになって、長いこと忘れていた古米のことまで思い出している自分が可笑しい。
こんなことを呟いていたら、今丁度、来年度に備えての契約更新の手続きをしたいという電話が入った。きょうは森林管理署へ行く用事もあり、ついでにそれも済ませることにした。
話は大分変るが先日、友人4人で外へ夕飯を食べに行った折、例により食い物の話になった。そこでつい、ジンジャー醤油を使った和風味のハンバーグの考案者が誰かを明かしたら、それを聞いた3人は爆笑、罵倒、危うく嗤い殺されかけた。
そのまま無実の罪で果てるのかと思っていたら救世主、途中から車に乗り込んできた記憶力がよいことで評判の元警察官Sが、ある馴染みのレストランで半世紀も昔し、よくそういう特別注文をしていたことを覚えていてくれた。それだけで、元祖を名乗るのに不充分は承知だが、ここから先はかなりややこしい。それを説明すると終わらないので先はまたいつか。
で、信州に帰ってきてから美味いハンバーグと縁がなかったこともあり、何年ぶりかで「オレ風ジンジャー醤油味ハンバーグ」を作ってみた。この時も「CAMP ONE」時代のあの古いノートを引っ張り出し、遠い記憶と、苦い思い出に哭いたり笑ったりした。
その結果、また哭いた。涕かざるを得ないほど自作のそれは美味過ぎたのだ。そして思った、3年間の赤字の原因は、決して味のせいではなかったのだと。遠いとおい、小さな思い出である。
本日はこの辺で。