入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      「秋」 (4)

2015年08月25日 | 牧場その日その時


昨夜も鹿の動向の調査に出れば、あまりにも霧が深く途中で引き返してきた。その霧は今朝になっても変わらない。午前5時半、気温15度。どこからか、ボウ、ボウとアオバズクに似た鳥の鳴き声がしていたが、今はなにも聞こえない。完全なる無風、無音の状態で、よどんだ霧は辺りを厚く覆ったまま動こうとしない。こういう朝を何度迎えたことだろう。
 コーヒーを飲んでいる間に一度霧は少し薄れかけたが、どこから湧いてくるのかまた白い闇となって、それを眺めている者の意識や時間さえも曖昧にしてしまう。こういうことを繰り返し少しずつ霧は、森や草原の濃い緑の色を薄め、秋の色に変えていく絵筆のようだ。


  木の根元に注目

 錯誤捕獲されたクマは木に登れば逃れられると思うのか、それともそれが最後の足掻きなのか、ともかく周囲の立木の枝や外皮は無残に折られ、剥がされる。こうした獰猛さを見せる反面、なんとなくひょんきんで、愛くるしい面もその姿や動作にはある。
 森からクマの姿が消えてほしいなぞとは思わない。小グマを連れた親グマが、小黒川の対岸を歩いていく姿を目にしたこともあれば、何に驚いたのか車の直前を走り抜けっていったクマもいた。クマが意外と身近な存在であることは分かっている。
 と、ここまで書いたら人の声。出ていってみると、鹿の有害駆除に携わる「駒ケ根班」の人たちで、なんとまた罠にクマがかかってしまったという。さぁ忙しいことになった。詳しいことは、明日。


 麻酔は効いてるが目と耳は動いてる

 苦労の末、ようやくWin10に写真を取り込む方法が分かった。それが今日の写真。かんとさんからの素晴らしい天体写真も届いた。どうぞご期待ください。
 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27年の営業」を、星空に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。
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      Ume氏の入笠 「晩夏」 (3)

2015年08月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

  夏をすでに終えてしまった者としては、今年もスイカ、モモも、はたまたトウモロコシ、シマウリなぞもついぞ口にすることなく季節が過ぎてしまったということになる。昨夜はそんなことを考えながら、暗くなりかけた山道を帰った。食べたくても食べれなかったというわけではなかったが、朝採りしたトマトにばかり執心して、こうした果物や野菜にまで嗜好が向かなかった。
 スーパーに陳列されていたスイカを目にして、いよいよ夏が来るのかと思ったのがついこの間のことだった気がする。いつにも増して、短命な夏だったということだろうか、雨ばかり降って。

 夏をすでに終えた者として、もう一つ伝えなければならないことがある。
 Ume氏には、去年の秋から一年、このブログのために貴重な氏の作品を提供してもらい、大変有難かった。氏の季節ごとの多彩な写真は、好評を博し、たくさんのファンもできた。40年のキャリアが、作品の随所に感じさせられ、今後もこのブログの読者の期待が大きいことは、頂いたコメントなどからも分かる。
 しかし思えば当然のことながら、氏の負担も決して少なかったわけではなく、加えてマンネリを嫌うという理由もあって、ひとまず一段落させたたいという申し出が先日あった。大変残念なことだが、これまで氏の充分過ぎるこのブログへの厚意と貢献を思えば、こちらからはひたすら感謝する以外、何も言えない。
 願わくば、これからも今まで通り入笠を愛し、多くの作品を残し、ときにまたこのブログに素晴らしい作品を登場させていただけることを約してもらい、「Ume氏の入笠」シリーズを取り合えず了としたい。
 まだ何点か未紹介の作品が残っているため、それらは随時掲載させていただく。Ume氏と、そして氏の奥さんにも、深甚なる感謝!

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     「秋」 (3)

2015年08月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                                  Photo by Ms. R.F

北原のお師匠が「今年最後のハナビラタケ」を採るのだと言ってやってきた。先日の「法華道」の登り口にその碑を建立したときに会って以来だ。このブログのたまに載せる牛の写真がお気に入りのようで、「牛はかわいいもんだな」と、いつもと同じことをつぶやき、去っていった。キノコ採りを終えたら今日も、本家・御所平峠から法華道の草刈りをすると相変わらず元気で、忙しい(不肖の弟子としてはここらあたりは敬語表現にしたいところだが、師は嫌う)。
 
 ならば今日の2枚、とっておきとの貴重な写真を師に献呈させていただく。
 今ではこういう光景を目にすることもなくなって久しいが、ご存知「貴婦人の丘」でくつろぐ牛たち。風の通りがよく、牛にとってもお気に入りの場所だった。ここからの中央アルプスと北アルプスの四季を通じた眺め、また息を飲むほどの美しい夕焼けにも、牛の鷹揚、自在な姿がよく合った。


     ウムー、この写真では息は飲めないか

 それならば、どうだぁーつ!

                                                  Photo by Ms. R.F

 在りし日の初代「マキ男」、変じて「マッキー」、本名「雪豊」の雄姿。こんな顔をしているが性格は割合おとなしく、よく協力してくれた。マッキーを誘導できれば数十頭の牛が、この唯一の黒毛和牛の雄牛に従った。本業の種付けも、成功率は9割を立派にこなした。ただ惜しむらくは、マッキーの宿した子は小柄で、出産には適していたが、それを肉牛に育てる肥育家の間では必ずしも良い評価は得られなかった。
 酪農家は無事に出産さえすればそれで搾乳が約束されるから子牛は小さくても構わない。むしろその方が母体の負担が少ない(ただし、売値は落ちる)。一方、その子を仕入れて大きく育てたい肥育家にとっては、最初から子牛が小さければ肉牛としての将来に期待が持てず、育て甲斐もない。ということで、両立は難しい。
 マッキーの姿がこの牧場から消えて、早くも3年になる。この仕事をするようになった9年前にはすでに、マッキーはいた。そのころは、この牧場にも200頭近い牛が放牧されていたが、トップの写真はそのころのものだろうか。

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     Ume氏の入笠 「晩夏」 (2)

2015年08月21日 | 牧場その日その時

Photo by Ume氏
 
 牛の牧区替えを控え、この牧場では一番広い第3牧区をさらに東西に分けるため、電気牧柵の立ち上げをやっている。単調で根気の要る仕事だが、こういう作業も今では以前ほど嫌ではなくなった。むしろ深い霧の中で、広い草原のど真ん中に一人で働いているのは、今日のUme氏のPHのトンボにも通ずるような、なかなかいい気分だ。
 妙なところでこだわりが出て、遠くから見たら牧柵が綺麗な直線になっていないのが気に入らず、折角打ち込んだ支柱を昨日は何本も抜いて打ち直した。その支柱に碍子(がいし)を付けた上で、上下2本のアルミ線を張ってゆき、張り終えたら6000ボルト前後の電流を流すわけだが、この2本のアルミ線の間隔にも固執してしまう。そうやって自分の好みや、やり方で完成した電気牧柵を、今度はただ一人で眺めて悦に入ったり、満足感に浸るのである。誰かが見るわけではない。苦労の報酬は大いなる自己満足を伴う達成感であり、農作業とはそういうものかも知れないとこのごろ思うようになった。
 細かい霧雨が降っていたが、それほどそれが気になるということはなかった。ふと我に返り、それまで考えるともなく考えていたことを中断して、仕事の進捗具合を眺めては納得して、再び同じ作業を続けていく。そのときにはもう、さっきまでとはまったく別なことを考えたり、思い出したりしている自分がいて、それもまたいい。昨年はこの牧区には牛を出せなかったから久しく来なかった場所もあり、それで次から次へと懐かしい記憶を甦らせてくれる。
 電気牧柵といえば、先日不幸な事故が起きてしまったが、ここで使用している電牧は当然ながら電流をパルス変調して送っている。それでも、感電すると全身の筋肉が一瞬締め付けられ、かなりのショックがある。

 「海のおうち山のおうち」のChiyさん、援護射撃ありがとうございました。Toshy殿の体調はよくなりましたか。今夏は会えなかったですね。ブログは楽しく拝見しているので、そちらの様子はよく分かってます。「ばばあ」は思い切りましたね。やまださん、会えば思い出すでしょう。イワアナとビールですか、クク、そんなことがあった気もします。かんとさん、天体写真ありがとうございます。ただ、10にしたら、Gmailが開けなくなってしまい弱っています。なんとかします。
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      Ume氏の入笠 「晩夏」 (1)

2015年08月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 いつの間にか、あれほどに歌ってくれていたウグイスの声もしなくなった。求愛を重ね、縄張りを主張し合った賑やかだった鳥たちの森は、今は深い霧に包まれてしまって何も聞こえてこない。そういう時期が終わったというのか、それとも、早くも里へ下りてしまったのか。

 一昨日また、鹿とイノシシを対象に伊那猟友会が仕掛けた有害駆除用の罠にクマが掛かった。登ってくる途中で、地方事務所のT氏と出会い、そのことを知った。幸い、というのか、手配が上手くいって、麻酔銃を扱える信大のI先生がすぐに駆けつけたようだ。
 クマは有害獣に指定されていないので、狩猟期間外は「錯誤捕獲」扱いとなり、原則勝手に殺処分することはできない。麻酔銃でいったん眠らせ、”適当な場所”に移し、目が覚めたら唐辛子の成分であるカプサイシンを浴びせて懲らしめとし、放獣する。これを学習放獣と呼ぶがその際、捕獲の記録が分かるタグも付ける。
 これで一件落着・無事終了ならよいが、さてそうだろうか。
 まず今回は麻酔銃を取り扱える者が現場へ急行できたからよいが、罠を繋いでいる4ミリのワイヤーではクマの力で切れてしまう恐れ、可能性がある。また、スプリングの力で締め付けている罠を爪で開けてしまった例も過去にある。
 次に、クマの活動範囲は怖ろしく広いので、学習放獣に相応しい場所などなかなかあるとは思えない。この近くで捕獲されたクマが、付けていたタグから4カ月前に長野県北部の大町ですでに捕獲され、学習放獣されたクマだったという話を耳にしたこともある。
 もう一つ、クマの生息頭数の推計は信頼できるのかという点である。行政としては当然この数字を基に、上記のようなクマ対策をとっているのだろうが、鹿の例で見られるようなことが起こらないか、或は逆にたった3カ月の猟期でクマの頭数激減などという懸念も、なしとは言えそうもない。
 クマの被害は大騒ぎされる割合に、死亡事故にまで至るような大事なケースは稀で、それに比べたらむしろ,毒キノコによる被害の方がよほど深刻だと、クマ対策員のG氏は言う。
 そのキノコの季節が、もうすぐ来る。

 以上のようなことを一昨日ブログでアップしたようとしたら、何故か文章は落ちてしまった。いまだ原因不明。
 かんださん、約束どうりコメントありがとうございました。SRIさん、葉書落手しました。多謝。今度は間違えずにおいでください。SUGIさん久しぶり。伊那側の二つの古道、「石堂越え」と「法華道」を結ぶような山道が目下の関心事です。

 秋の予約も頂くようになりました。入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27の営業」を、また星に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。
 
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