入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「春」(60)

2023年05月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

     Photo by Ume氏

 雨が降っている。下からの連絡では、夕方には上がると聞いたので、その予報を信ずることにした。
 牧場の仕事は第2牧区と第4牧区の電気牧柵の立ち上げがまだ残っている。しかし、これをあまり早くすると、鹿にリボンワイヤーやアルミ線を切られてしまうことは充分に承知している。入牧までにはまだ半月以上あるから、慌てる必要はないだろう。
 
 牛が来ればこんな天気でも最低頭数確認と、電牧の点検は欠かせない。第4に牛を出せば、小入笠の頭までは雨支度をして上がることになる。また昨年から、第2牧区の一部に電牧を設置したからその見回りも増えた。雨の日、高い電圧の流れる電牧仕事は厄介である。
 10年ほど続けてきた第1牧区の鹿対策用の電気牧柵は、昨年からその大半に電流を流すのを止めた。維持管理とその効果を比較した結果で、昨年に牧柵の一部を第2牧区に移し、この牧区の範囲を狭め、再び放牧地として使えるようにした。

 昨日は気になっていた水源地へ行ってきた。今年も水質検査はすでに終わり、一度で合格しているが、長年水回りでは苦労して来ただけにこの点検にも思い入れがあり、手の抜けない仕事としてやっている。
 実はこの水は実に美味い。どういう地下水路を通てくるのか分からないが、今この時季でも10秒と水の中に手を入れてることはできないほど冷たく、酒の味はよく分からないけれど、ここの水の美味さは分かる。甘い。万一の腹痛を覚悟しても、飲む価値があると思うほどにだ。

 普段は殆ど水分補給をしない。せいぜいコーヒーを飲むくらいで、プラスチックの入れ物に入った水を飲むなどという野蛮な真似はしない。もちろん、水の代わりにはならないというビールなら飲む。
「One Man’s Wilderness」の主人公が同じようなことを書いていて、アラスカの彼が建てた山小屋の近くを流れる小川の水は、どんな高級ワインにも負けないと自慢していた。
 それを読んだ時はエラク大きく出たなと思ったものだが、しかし今はそう思わない。アラスカに行っても生水など飲んだことはないが、彼を信じることにした。
 それにしても我が「One Man’s Wilderness」の水は、入笠山の山腹に巨大な氷の塊があって、そこから少しづつ融け出して、あの水源に至っているのかと思いたくなるくらいだ。

 寒いと思ったら、気温は8度しかない。
 
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     ’23年「春」(59)

2023年05月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 カッコウの鳴く声がしている。曇り空によく響く。この鳴き声を好きなだけ鳴いていろと思うか、それともくどいと感ずるかは、聞く側のその時々の心理状態に関わってくるようで、今朝は前者の気分で聞いている。



 最近はcovid-19に関する話題も減って、少しづつ観光地は賑わいを取り戻しつつあるようだ。きょうの写真は当牧場のキャンプ場、A、B、C、D、E、5か所あるキャンプサイトのうち、Cの先週末の様子で、ご覧のように静かなものだ。Bにも1組2名がいるが、昨年と比べても今年の方が出足は鈍い。


 
 6月の3日には、平澤真希氏のピアノコンサートが予定されていて、昼の部に続く夜の部は、所を変えてこのCサイトで、月下の電子ピアノによる演奏が行われることになっている。
 順序が逆になってしまったが、これに先立つ昼の部は第5牧区の森の中に会場を設定し、ここへは小型ながらグランドピアノを搬入し、彼女が日ごろ主張している「自然を触媒(catalyst)にしたピアノ演奏」が行われる。
 予約状況はまずまずで、特にBチケット3000円に関しては入場者数50名を少し増やすことも考えている。なお、Aチケット12000円、男女各10名は、Bチケットと比べ大分開きがあるが、こちらは小屋泊まり1泊2食付きで、さらに夜の演奏が加わり、翌日は案内人付きの牧場付近の散策も企画されている。それらを考えた上での値段設定のようだ。なお、男性のAチケットはすでに予約が埋まっている。



 普段、この独り言では、このような宣伝めいたことはしないとしてきた。しかし今回は、図らずも多くの友人、知人の支援を受けてしまった手前、何としてもこの企画を成功させなければならず、いつもの呟きの分を越えてしまったかも知れないが何卒ご理解ください。

「おいコンサート、もっと徹底して売り込まなきゃ駄目だぜ。やっぱAツァは社長にはなれないなェ」と、元社長の畏友FMZ君からは励ましだかお叱りを受けてしまった。不肖、恐懼低頭!

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     ’23年「春」(58)

2023年05月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 相変わらず朝は早い。現在の時刻は5時25分だが、約1時間前には起きていた。そして鳥の声を聞きながら、この時季には珍しい薄い筋雲が幾つもゆっくりと南から北へと移動していくのを眺めていた。
 巻雲はその名の通り遥か上空で、見えない大気の抵抗でも受けているのかどれも先がめくれ、白波のようにも見え、そうした雲が長い時間をかけて後からあとから現れてくる。
 カッコウの声が一時止んで、また鳴き出した。権兵衛山に日が当たり始めたから、もう少しすれば雲は消えてしまうだろう。

 外に出て弁天様下の三叉路まで行く途中、雲海の上に純白の衣を纏った槍や穂高が、生まれたばかりの朝の光を浴びて輝いて見えていた。
 それで欲が出て、急いで引き返し、第1牧区へ行ってみた。そこの方が、もっと見事な山々の姿が見られるだろうと期待したのだ。
 いつものように牧区の入り口でまず天空に御嶽、ついで乗鞍が覇を競うように現れ、その横に濁った灰色の薄い雲に少し邪魔をされた穂高、槍の峰々が続いていた。
 
 写真を撮ろうとしたが諦め、目で見るだけにした。御嶽だけを対象にしても、乗鞍岳に絞っても、実際に見えている姿には到底及ばない。と言うよりか、まず大きな空があって、目線とほぼ同位置に横並びに霊峰、名峰が続き、その全体の壮大な眺望はどれを欠いても、何を加えても、たちまち嘘になってしまう。そういうここだけの眺めで、とても手持ちの携帯では写真にはならないと納得させられた。

 御所平には30頭くらいの鹿が草を食んでいる最中で、そのうち1頭がこちらに気付いた。ちょっと逃げようとして立ち止まり、さてどうしたものかとこっちを見ている。そのうちにもう1頭が仲間を促し、取り敢えず逃げておくかとでも判断したのだろう、ゾロゾロと牧柵を越えて落葉松林の中に姿を消していった。少し離れた別の群れも、不承不承それに従った。
 あの辺りには一箇所わざと牧柵を破られたままにしてある。どうせまた破るなら、牛が放牧するまではどうぞそこから自由にお入りください、と言う意味だ。
 電気牧柵を設けても、その維持のために多大な労力を払っても、鹿は勝手に入ってくる。あれらも生きていかねばならない。

 まずまずの好天の山開きとなりそう、気温もかなり上がるだろう。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
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     ’23年「春」(57)

2023年05月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 日毎に森や林の緑の色が濃くなってきている。こうなると、同じ緑の色でも樹種による微妙な違いがなくなり、自然という巨匠の筆はどこを見ても色調が単純化され、それゆえに段々と景色は大雑把で平面的になって、笑顔が消えてしまう。
 そんな中で、ダケカンバだけは辺りの自然の進み具合を無視して、葉の色まだ薄茶色のままだ。標高2600㍍の森林限界ギリギリまで生育域を持つこの木のこと、それと関係しているのかはとにかく、晩生(おくて)である。

 雨の降り方が本格的になってきた。週末から来週にかけては忙しくなるし、今朝はこんな天気を予想していたので、7時にはすでに仕事を始めていた。第2牧区の初の沢の源頭に下っていく湿地帯の傍に牧柵があり、これが気になっていたのだ。
 昨年は、こんな所に牛など行かないだろうと思っていたら、その場所をどうやって抜けたのか流れを渡り、小黒川林道へ通ずるテキサスゲートの手前では落とし物までしてくれてあり、慌てたことがあった。
 その辺りの牧柵を今回、納得のいくようにもう一度やり直すことにした。

 先人の仕事には大いに敬服することがあり、そういうご苦労の跡を見るのは嫌いではない。先人と言っても、おそらく前任者よりももっと前の人たちだと思うが、いくつもの苦労の中でも水の確保は大変だったと思う。今回も思いもしなかったとんでもない場所で、水道管の一部が飛び出しているのを目にし驚き呆れた。
 
 支柱を打ち換え、有刺鉄線を張り直し、見直して一人悦に入る。どうかすると、錆びた古いバラ線と、錆びてないバラ線とが一緒くたにされ、乱雑に絡み合っていたりするが、これで牧柵がスッキリした。恐らく10年以上は大丈夫だろう。
 牧柵ばかりか、他の仕事であれ多くの場合、仕事においては先人を意識している。同じように、牧場がこの先もずっと存続していたとしたら、わが後継者はこんな仕事を見てどう評価するだろうかと考え、唯一、気になる相手だと思っている。

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     ’23年「春」(56)

2023年05月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 ヤマナシ、そして早咲きのコナシの開花が始まった。コナシはこの木らしく、好き勝手に花を開き、なかなか他の木と歩調を合わせようとしないのはやはり性格なのか、つい、ある人の顔を思い浮かべた。
 それでも稀に開花が揃った年などは実に見事なもので、牧草地に幾筋もの白い花の帯を見せてくれ、この時ばかりは性悪の善行を大いに讃えたくなる。山桜や他の草木と同じく、芽吹きも開花もいつもの年より早いが、さて今年はどうなるか。

 コナシと言えば、一昨日に伐り倒した大木の始末を昨日の中に済ませることができた。後からあとから幾本もの枝が複雑に絡んでくるこの木の執念深さ、やはり、あの奔放、奇怪な枝の処理には手を焼く。
 今回は1本だけだったから助かったが、道路にはみ出た徒長した枝の処理には時間もかかり、危険もともない本当に一時は途方に暮れた。今でも、その苦闘の後が残っているが、そんなことに気付く人などいないだろう。
 切れの悪いチェーンソー、不安定な足場、高枝用のノコギリなど道具の不足、不備、それを扱う側の経験、技量不足などなど、よく何もなかったと思うほどだ。また何年かすれば同じ苦労をすることになるだろうが、もうその任を負うことはない。
 
 きょうは20日に行われる入笠山の開山祭に備え、道路に落ちているカン拾いに行政、農協からも人が上がってくる。一人でも充分にできることで、そんなことに人を集めるくらいなら、先程の枝打ちもそうだが、側溝を浚うとか、もっとやって欲しいことはいくらでもある。
 恐らく、そういう作業そのものよりか、関係者同士が顔を見せあって、交流を深めるというような目的があってすることだろう。目に付いた空き缶などはすでに拾ってある。

 キャンプの予約をして来た人の中に、ここの星空の美しさを褒めてくれる人がいた。ここの"売り"にしていることに感心を持ってもらえて、もちろん歓迎を惜しまない。昨夜はそれで、久しぶりに自慢の夜空を眺めてみた。
 南の空の低い位置に「サソリ」、東の高い位置に「白鳥」、「琴」、「鷲」で構成する「夏の大三角」、中天からやや西の空に「北斗七星」、そしてその柄の先にわが星「牛飼い座」の主星「アルクトゥールス」が赤味を帯た光を放って、堂々と見えていた。

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