■官僚や公務員の劣化は今に始まったことではありませんが、モリカケ問題以降、特に酷くなってきていることは、国民の多くが感じているところです。末尾に掲げた一年前の昨年2018年3月23日付の記事にあるように、再発防止に向けて「公務員制度改革」が待ったなしの状況にありますが、政権と官僚ががっちりスクラムを組んで、互いに「忖度」しあっている有様では、どうしようもありません。せめてオンブズマン活動を通して、善処を促していくしかありませんが、官僚を指導する大臣が親分の総理と副総理に堂々と「忖度」発言をするに至り、この国の政治と行政はどうしようもない状況に陥ったと言えるでしょう。さっそく塚田国交副大臣の辞任に至った経緯を見てみましょう。
**********時事2019年04月05日10時58分
塚田国交副大臣が辞任へ=忖度発言、事実上の更迭-政権、選挙への影響懸念
↑塚田一郎 国土交通副大臣↑
道路建設事業をめぐり安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎国土交通副大臣(自民党麻生派)が5日、辞任する意向を固めた。首相による事実上の更迭とみられる。主要野党がそろって辞任を要求するなど、批判が拡大する中、続投させれば統一地方選や夏の参院選に悪影響が及びかねないと判断した。
「忖度」発言、政権火種に=野党は塚田氏辞任要求
塚田氏は4日、麻生派会長の麻生氏と会い、「迷惑を掛けたので辞めたい」と伝えた。自民党内からも速やかな辞任を求める声が強まっていた。首相は後任人事に着手しており、政府関係者によると副大臣経験者から選ぶ方向だ。
1日の新元号「令和」発表以降、首相には追い風が吹いているとみられていたが、統一地方選のさなかに手痛い打撃となりそうだ。
**********毎日新聞2019年4月5日 10時12分(最終更新 4月5日 10時13分)
塚田副国交相が辞任へ 「忖度」発言で引責
↑参院決算委員会で自身の「忖度」発言について答弁する塚田一郎副国土交通相=国会内で2019年4月4日午後1時2分、川田雅浩撮影↑
塚田一郎副国土交通相は5日、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元同士を結ぶ道路事業に関し、「忖度(そんたく)した」などと利益誘導をしたと取れる発言をした責任を取り、辞任する意向を固めた。自民党幹部が明らかにした。
<塚田副国交相の応援演説の抜粋>
・大家(敏志)さんが、私が逆らえない吉田博美参議院幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。地元の要望がある。これが「下関北九州道路」です。
・「副大臣、これ何とかしてもらいたい」。動かしてくれということであります。で、吉田幹事長が私の顔をみて「塚田分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。「俺が何で来たと思うか」と言うんですね。私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度(そんたく)します。分かりましたと。総理とか副総理がそんなこと言えません。(中略)でも私は忖度します。
・それで、これを今回の新年度予算に国で直轄の調査計画に引き上げました。
**********毎日新聞2019年4月4日 20時57分(最終更新 4月5日 10時11分)
塚田氏の忖度発言、強まる逆風 与党からも、くすぶる辞任論
↑参院決算委員会で自身の「忖度」発言について答弁する塚田一郎副国土交通相=国会内で2019年4月4日午後1時2分、川田雅浩撮影↑
↑下関北九州道路↑
↑塚田副国土交通相の「忖度」発言問題↑
山口、福岡両県を結ぶこの道路計画は首相と麻生氏の地元が舞台。統計不正問題で安倍政権を攻めきれなかった野党は「統計問題よりずっとわかりやすい。統一地方選にも影響するだろう」(立憲民主党幹部)と勢いづく。
★塚田副国土交通相の「忖度」発言問題
塚田氏は参院決算委で、1日の自身の発言に関する報道を翌日知り、「改めて発言内容を思い起こし、事実と異なるという認識に至った」と釈明した。北九州市での福岡県知事選の集会だったことで「熱が入ってしまった」とも述べた。
自民党では昨年11月、下北道路の整備促進を図る参院議員の会が発足し、吉田博美参院幹事長が会長に就任した。吉田氏は昨年12月20日、国交省の副大臣室で塚田氏と面会し、道路局長らが同席した。さらに3月19日には山口、福岡両県知事らが石井啓一国交相に調査を国直轄にするよう要望。2019年度予算が成立した3月27日、国の調査費約4000万円が決定した。
こうした経緯から、野党は4日、国会内で行った国交省などへのヒアリングで「吉田氏と塚田氏の面会がだめ押しになって4000万円の予算がついたのではないか」(立憲民主党の長妻昭氏)などと追及。国交省側は塚田氏と吉田氏の会談内容を明らかにしなかったが、「時系列的にはそうなる」と認めた。
一方、参院決算委で共産党の仁比聡平氏は、与党議員有志の会「関門会」が16年、石井氏に提出した計画の早期実現を求める要望書に首相の名前があるとして「まさに安倍・麻生道路」だと批判した。これに対し、首相は「要望書が出されたことは知らなかった。そもそも私は首相として陳情する立場にない」と反論した。
仁比氏は、麻生氏が「下関北九州道路整備促進期成同盟会」の顧問だとも指摘したが、麻生氏は「地元のそういったものには名前がよくのっかる」とかわした。
学校法人「森友学園」「加計学園」問題が下火になる中、塚田氏の発言で「忖度」は再び国会論戦の焦点に浮上した。新元号発表後、共同通信の世論調査などで安倍内閣の支持率が上向いただけに、自民党関係者は「『令和』の2文字でお祝いムードになっていたのに、『忖度』という別の2文字がまた出てきた」と嘆く。
自民党の石原伸晃元幹事長は4日、石原派の会合で「気を引き締めないと小さな穴が大きな穴になる」と苦言を呈した。塚田氏が所属する麻生派の会合では麻生氏が「気を抜くと常に問題が起きる。緊張感を持ちつつ務めを果たしてほしい」とあいさつしたが、塚田氏の名前は出さなかった。自民党内では「塚田氏の進退は麻生氏が判断する」とみられている。
野党は、塚田氏が辞任しなければ来週の参院国交委で航空法改正案の審議に応じない構えだ。自民党幹部は「当面持ちこたえると思うが、来週の国会次第で状況は変わる」と懸念した。【田中裕之、小田中大】
**********日経2019年4月5日9:59
塚田国交副大臣、「忖度」発言で辞任へ
自民党麻生派の塚田一郎国土交通副大臣は5日、道路整備に関して安倍晋三首相や麻生太郎副総理・財務相の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した問題を受け、辞任する意向を固めた。7日投開票の統一地方選や21日投開票の衆院大阪12区と沖縄3区の補欠選挙などへの影響を考慮したとみられる。
麻生財務相は5日の閣議後の記者会見で、塚田氏から4日に「迷惑をかけたので辞めたい」として辞意を伝えられたことを明らかにした。
↑参院決算委で「忖度」発言について撤回、謝罪する塚田国交副大臣(4日)↑
塚田氏は1日、北九州市での集会で、同市と山口県下関市を結ぶ下関北九州道路の整備について首相と麻生氏の地元だと言及したうえで「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」と述べた。その後に「我を忘れて事実と異なる発言をした。行政の信頼性をゆがめた」と陳謝したが、野党は利益誘導だと批判し、辞任を求めていた。
首相は4日の参院決算委員会で「事実と異なることを有権者の前で述べたのは重大な問題だ」と指摘した。野党からの更迭要求には応じない考えを示したものの、自民党内でも選挙への影響を懸念し「辞任は不可避」との声が強まっていた。
塚田氏は参院新潟選挙区選出で当選2回。麻生氏の秘書などを経て2007年に初当選し、18年10月に国交副大臣に就いた。
**********毎日新聞2019年4月4日 20時23分(最終更新 4月4日 22時03分)
忖度発言、地元統一選に影響 アピール材料が一転、疑惑の的に
↑約2キロの海峡を渡る下関北九州道路の地元推奨ルート=北九州市など作製のパンフレットから(画像の一部を加工しています)↑
統一地方選のさなかに飛び出した、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ下関北九州道路での「忖度(そんたく)」発言が、地元の選挙戦にも余波を広げている。自民参院議員の塚田一郎副国土交通相(新潟選挙区、麻生派)の発言を巡り、自民候補の陣営からは悪影響への懸念が聞こえる一方、野党陣営は「敵失」に乗じ批判を強めている。
「あんなことを言わなくてもいいのに」。福岡県北部で県議選を戦う自民候補の陣営関係者は気をもんだ。
**********日テレNEWS24 2019年4月4日(木)12:23配信
野党“忖度”塚田氏追及 与党から辞任論も
国会では安倍首相も出席して決算委員会が行われている。野党側は塚田国土交通副大臣の「忖度(そんたく)発言」を引き続き追及している。
政府与党としては新元号発表で内閣支持率が上がったところに、冷や水を浴びせられた形で、与党内からも辞任論が浮上している。
この問題は、塚田氏が福岡県と山口県を結ぶ道路の整備計画が進展したことをめぐって「安倍首相や麻生副総理が言えないから、私が忖度して応じた」などと発言したもの。その後、発言を撤回、陳謝したが野党側は追及を強めている。
立憲民主党・蓮舫参院幹事長「これは忖度じゃなくて、もう利益誘導です。税金は自民党のためのものだとまさに明言しているようなものですから、この内閣で増税なんかできないと思いますし」
統一地方選の真っ最中だけに与党内からも「完全にアウト」「国会に迷惑をかけたら辞めざるを得なくなる」と早期の辞任を求める声が出ている。
ただ官邸幹部は「大丈夫だ。野党は他にやることがないんだろう」と強気の姿勢。
一方、社民党の又市党首は4日午前、決算委員会で塚田副大臣の更迭を求めたが、安倍首相はこれを否定した。又市党首は「うそをついて票を集める。そういう利益誘導まがいのことをやったのではないか」と厳しく指摘した。
**********西日本新聞2019年4月4日(木)10:46
「われを忘れた」塚田氏が忖度発言を釈明 辞任は否定
↑福岡県知事選の自民党推薦候補の応援で演説する塚田一郎国土交通副大臣=1日夜、北九州市↑
自民党参院議員の塚田一郎国土交通副大臣(新潟選挙区)は3日、衆院厚生労働委員会で山口県下関市と北九州市を新たに結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)に関する予算を巡り、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の意向を忖度(そんたく)したとの発言を謝罪し、「大勢の人が集まる会の席で、私自身がわれを忘れて誤った発言をした」と釈明した。野党6党派は同日、塚田氏の辞任を求める方針で一致したが、首相は罷免を否定した。
首相は衆院内閣委員会で「発言は問題だと考えている。副大臣としての公正性が疑われてはならないのは当然だ。本人が重大に受けとめ、撤回し、謝罪した」と強調。菅義偉官房長官は記者会見で「二度とこのようなことがないように厳重に注意した。本人が丁寧に説明する責任はある」と述べた。
塚田氏は1日、福岡県知事選(7日投開票)の自民推薦候補の応援演説で、国が本年度から下北道路の直轄調査への移行を決定したことについて「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言。翌2日に撤回した。
塚田氏は、衆院厚生労働委と内閣委で「私が忖度したということはないし、安倍総理、麻生副総理の地元の案件だから特別な配慮をしたことはない」と釈明。「説明責任を果たすことで職責を全うしていきたい」と辞任は否定した。
塚田氏は、下北道路建設を推進する自民党の吉田博美参院幹事長から「これは総理と副総理の地元の事業だよ」と言われたことも1日に明かしたが、吉田氏は3日、「首相に忖度して取り組んでいるわけではない」と関与を全面否定するコメントを発表した。
野党6党派の国対委員長らは3日、国会内で会談し、塚田氏の辞任を要求する方針で一致。立憲民主党の辻元清美国対委員長が自民党の森山裕国対委員長に伝えた。辻元氏は記者団に「本人が撤回、謝罪したことで済まされる話ではない。利益誘導は絶対にやっては駄目だ」と批判した。
**********毎日新聞2019年4月3日 20時48分(最終更新 4月3日 20時49分)
「私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します」塚田氏発言の抜粋
塚田一郎副国土交通相は1日夜に福岡県知事選の自民推薦候補を応援演説し、山口県下関市と北九州市を結ぶ下関北九州道路の建設計画を巡り、国が今年度から国直轄の調査への移行を決めたことについて、下関市が地盤の安倍晋三首相らを念頭に「私が忖度(そんたく)した」と述べた。
塚田副国交相の応援演説の抜粋は以下の通り。
・大家(敏志)さんが、私が逆らえない吉田博美参議院幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。地元の要望がある。これが「下関北九州道路」です。
・「副大臣、これ何とかしてもらいたい」。動かしてくれということであります。で、吉田幹事長が私の顔をみて「塚田分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。「俺が何で来たと思うか」と言うんですね。私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します。分かりましたと。総理とか副総理がそんなこと言えません。(中略)でも私は忖度します。
・それで、これを今回の新年度予算に国で直轄の調査計画に引き上げました。
**********毎日2019年4月3日(水)20;43配信
「言った時点でアウト」塚田氏の「忖度」発言、新たな火だねに
↑衆院内閣委員会で自身の「忖度」発言について撤回、謝罪し頭を下げる塚田一郎副国土交通相(左)。右端は安倍晋三首相=国会内で2019年4月3日午後1時1分、川田雅浩撮影↑
塚田一郎副国土交通相が安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ道路事業で利益誘導をしたと取れる発言をした問題で、野党は3日、「撤回では済まされない」(立憲民主党の辻元清美国会対策委員長)と塚田氏の辞任を要求した。首相は衆院内閣委員会で塚田氏の罷免を否定したが、後半国会を安全運転で乗り切りたい政府・与党は新たな火種を抱え込んだ。
「言った時点でアウトだ。利益誘導、絶対にやっちゃダメ」。辻元氏は3日、国会内で記者団にこう語り、塚田氏の即時辞任を求めた。立憲など野党6党派の国対委員長はこれに先立つ会談で「塚田氏は辞任すべきだ」との認識で一致。辻元氏は自民党の森山裕国対委員長に辞任要求を申し入れた。
塚田氏は1日、北九州市で福岡県知事選の応援演説をする中で、首相の地元山口県と麻生氏の地元福岡県を結ぶ下関北九州道路の建設計画を巡り、「私、すごく物分かりがいい。すぐ忖度(そんたく)する」などと発言。首相らに配慮して国直轄調査への移行を決めたと受け取れる発言で、2日に「事実とは異なる」と発言を撤回し、謝罪するコメントを出した。
塚田氏は野党の要求を受けて3日の衆院内閣委に出席。改めて謝罪したうえで「忖度したことはないし、特別な配慮をしたということはない」と釈明。ただ、「説明責任を果たすことで職責を全うしたい」と辞任は拒否した。衆院厚生労働委では「大勢が集まる会だったので我を忘れて誤った発言をした」と苦しい答弁に終始した。
一方、演説の中で、首相と麻生氏の地元の事業だと指摘してきた相手として挙げられた吉田博美参院幹事長は3日、発言を否定するコメントを出し、「(道路計画は)当然ながら総理に忖度して取り組んでいるわけでもない」と突き放した。
統一地方選に加え、夏には参院選も控えており、政府・与党は引き締めが課題だ。首相は内閣委で「事実と異なる発言をしたのは問題だ」と苦言を呈し「まずは本人からしっかり説明すべきだ。そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と指摘。菅義偉官房長官は記者会見で、塚田氏に「二度とないように」と注意したことを明らかにした。
幕引きを図りたい政府・与党に対し、野党は追及を強める構えだ。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に「極めて恣意(しい)的な行政をやっているとしたら大問題だ」と指摘。共産党の穀田恵二国対委員長も「選挙戦最中に利益誘導とも言える内容で、何重にも許し難い」と述べ、衆院予算委の開催を求めた。【松倉佑輔、遠藤修平】
**********毎日新聞2019年4月2日 20時36分(最終更新 4月2日 22時37分)
下関北九州道路建設、「総理と副総理の地元」と迫られ…塚田副国交相「私が忖度」
↑塚田一郎副国土交通相↑
塚田一郎副国土交通相は1日夜に北九州市であった集会で、山口県下関市と北九州市を結ぶ下関北九州道路の建設計画を巡り、国が今年度から国直轄の調査への移行を決めたことについて、下関市が地盤の安倍晋三首相らを念頭に「私が忖度(そんたく)した」と述べた。利益誘導ととられかねない発言で、塚田氏は2日に謝罪のコメントを出した。塚田氏は自民党参院議員(新潟選挙区)で麻生派。
下関北九州道路は下関市と麻生太郎副総理兼財務相の勢力圏にある北九州市を結ぶ。塚田氏は福岡県知事選の自民推薦候補の集会で応援演説し、道路建設を推進する県選出国会議員らが副大臣室を訪れ「これは総理と副総理の地元の事業だ」と迫られたと明かした。「私はもの分かりがいい」と応じたとした上で「総理とか副総理がそんなこと言えない。私は忖度した」と語った。
塚田氏は2日、「一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪する。国で事業の必要性を鑑み、直轄調査を実施することにした」とコメントした。
下関北九州道路は関門橋の老朽化などを理由に計画されたが、国は財政悪化から2008年に計画を一旦凍結。17年度から両市の調査への補助金を復活させ、19年度予算に国の調査費約4000万円を盛り込んだ。【西嶋正法】
↑下関北九州道路の位置↑
地元自治体や経済界が求める下関北九州道路は、財政難から2008年に計画が凍結されたが、19年度予算で国は再び調査費を計上。自民関係者が困惑するのは、事業推進がアピール材料だったが、一転して疑惑の的になったからだ。県内の麻生氏の勢力圏で県議選を戦う保守系候補は「自分の選挙に必死の中、世間から『政治家はみんな利益誘導する』とみられかねない」と迷惑がった。
野党側は攻撃材料を得て争点化を図る。対岸の山口県下関市で議席を争う県議選の野党系候補の陣営幹部は「安倍さんは問題発言した人を処分しないから図に乗っているようにしか思えない。こういう政治は変えなくてはいけない」と批判。立憲民主福岡県連も「政治の私物化」と指摘し、3日の統一選候補の合同個人演説会で取り上げて問題視するなど攻勢を強めている。
影響は、保守分裂選挙の福岡県知事選にも及んでいる。
自民推薦で新人の武内和久氏(47)の陣営関係者は「選挙に関係ない。我々は有権者と毎日触れあうだけだ」と打ち消しに必死だ。小川洋氏(69)は現職として下関北九州道路推進の立場。国直轄の調査移行を実績として訴えてきただけに、陣営関係者は「下関北九州道路の問題を政争の具にするなど許されない。我々は正々堂々と政策として(必要な道路だと)訴えていく」と話した。
一方で、共産推薦の新人、篠田清氏(70)は「(武内氏と小川氏の)2人とも下関北九州道路の推進を表明している。忖度政治のもとで、大型開発に熱中するような県政でいいのか」と保守系の両候補を矛先に批判を強めている。【西嶋正法、下原知広、近藤綾加】
「本当の話、許されない」
塚田氏は発言を撤回し謝罪したが辞任要求は拒否している。政権の「緩み」との指摘もある今回の問題を有権者はどう受け止めているのか。
福岡市中央区の公園で花見をしていた同市の無職の男性(67)は「(塚田氏は)本当の話をしたのだと思う。政治家として許されないし、責任は取るべきだ」としつつ「自民党を支持するのは変わらないし、それは知事選でも同じ。自民党はもっとしっかりしてほしい」と注文をつけた。
同市の会社員の男性(47)は「発言を撤回するのは当たり前。安倍首相は早めに辞任させた方が良いのではないか」と語った。
「(事実ではなかったという)言い訳は苦し紛れにしか聞こえない。公共事業を正当な理由なく進めてはいけない」と問題視するのは同市の会社員の男性(24)。「このままでは自民がやりたいようにやってしまう」と統一選の投票先は自民党を避けるつもりで「野党がもっと頑張ってほしい」と漏らした。【佐野格】
<塚田副国交相の「忖度」発言>
大家(敏志)さんが、私が逆らえない吉田博美参議院の幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。地元の要望がある。これが下関北九州道路です。実はこれ、11年前に凍結されているんです。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理ですよ。安倍総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路の事業が止まっとるわけです。大家敏志が来てですね、「副大臣、これ何とかしてもらいたい」。吉田幹事長が私の顔をみて「塚田分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します。分かりましたと。総理とか副総理がそんなこと言えません。そんなこと実際ないんですよ。森友とかいろいろ言われてますけど。でも私は忖度します。今回の新年度予算に国で直轄の調査計画に引き上げました。できるだけ早く、皆さまのもとに下関から橋が通ってこられるように頑張りたいと思います。
=1日の北九州市内の集会で。一部を抜粋
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■公務員の劣化については、ちょうど3月30日の東京新聞「こちら特報部」でも特集で取り上げています。こちらも見てみましょう。
**********東京新聞2019年3月30日
官僚劣化どこから… モラル喪失、差別的行為…
厚労省元課長 韓国空港で暴れ、逮捕
年金事務所元所長 ヘイト投稿、更迭
新元号の発表が迫り、「新時代」を演出する政権の足元で、国政を支える官僚たちの暴走が目に余る。統計不正で揺れる厚生労働省の武田康祐元賃金課長は韓国・金浦空港で「韓国人は嫌い」と暴言を吐き、職員を蹴るなど大暴れ。日本年金機構世田谷年金事務所の葛西幸久所長は匿名でツイッターに「韓国人ひきょう」などと差別的投稿を繰り返していた。上が上なら下も下なのか。管廊たちの暴走はなぜやまないのか。
(中山岳、大村歩)
まずは今月十九日に韓国の金浦空港で起きたトラブルが記憶に新しい。私用で渡航していた厚労省の武田康祐賃金課長(当時)が空港職員に暴行したとして、現地の警察に現行犯で逮捕された。
現地メディアなどによると、搭乗口近くで職員が、武田氏から酒の臭いがしたとして搭乗を待つよう要請。すると同氏は英語で「韓国人は嫌いだ」とわめき、物を投げたり制止しようとした職員を蹴ったりするなどしたとされる。
前代未聞の醜態だ。だが、もっと驚かされるのは、逮捕された十九日、自身のフェイスブックに「なぜか警察に拘束されています。殴られてけがをしました。手錠をかけられ五人に抱えられ。変な国です」などと投稿したことだ。
さらに二十日は「酔っていない。暴れたが相手には当たってない。韓国人が嫌いだと言ったのは政治的意図ではなく職員への憤り」と更新。釈放されて帰国した。厚労省は同小實付の人事異動で官房付きとし、事実上、更迭した。
ちなみに武田氏は、渡航前にも物議を醸していた。七日に最低賃金の全国一律化を目指す自民党議連の会合で、四月から外国人労働者受け入れ拡大の対象となる十四業種で一律化を目指す意向を突然、表明。直後に菅義偉官房長官が全面否定し、厚労省幹部が「労使で決めること」と釈明する事態になった。
一体どんな人物か。賃金課長の前は、二〇一五年から二年間、内閣官房一億総活躍推進室などにいた。そこで、安倍晋三首相が旗を振る「一億総活躍プラン」や「働き方改革実行計画」を策定。一八年の厚労省の「総合職入省案内」にも登場し「安部総理の強い想いを実現するため、厚労行政に深い経験・知識を持った厚労省の出身者と、新たな発想を持った他省庁の出身者が十分に議論し、実現可能かを厚労省の同僚と議論した」と語っていた。
厚労省絡みなら、厚労相から委託を受けて年金行政をしている日本年金機構で今月下旬、発覚した「人種差別」も見過ごせない。世田谷年金事務所の葛西幸久所長(当時)が、匿名でツイッターに韓国人について「属国根性のひきょうな民族」「在日一掃、新規入国拒否」などのつぶやきを繰り返していた。野党議員については「いるだけで金をもらえるタカリ集団」と投稿。発覚後、同氏も更迭された。
暴走は差別的行為に限らない。今月中旬、さいたま市のJR武蔵浦和駅のエスカレーターで、女子高生のスカート内を盗撮したとして、農林水産省園芸作物課係長の池田秀一容疑者が埼玉県迷惑行為防止条例違反の疑いで現行犯逮捕され、釈放された。県警浦和署によると容疑を認めている。
↑金浦空港で厚労省のキャリアが逮捕されたニュースを報じる新聞↑
↑ネットに残る世田谷年金事務所長のものとみられるツィート↑
人事権握る政権に付度 高慢な「お上意識」表面化
官邸のイエスマン増 進む「政治化」
内閣法制局長官 野党の侮辱発言 即おわび
官僚の暴走は今に始まったことではない。少しさかのぼっても、森友・加計学園問題、財務省の公文書改ざん、財務次官セクハラなど数え切れない。だが、三月はあまりにも続く。
政治評論家の森田実氏は、六日にあった参院予算委貴会での内閣法制局・横畠裕介長官の発言が「官僚 たちの堕落を示す事例でも特にひどい」とみる。
委員会では、立憲民主党会派の小西洋之氏が「国会議員の質問は内閣に対する監督機能の表れ」という政府答弁があるのかと確認したのに対し、横畠氏が、「声を荒らげて発言することまで含むとは考えていない」と答えた。小西氏の質問姿勢を批判したことに野党側が猛反発。横畠氏はその後「おわびして撤回する」と陳謝した。
「憲法の番人」である内閣法制局の長官とは思えない。「政権の番人ではないか」と批判も出た。森田氏は「国会議員を真っ向から侮辱し、注意されれば保身のため撤回する。モラル喪失と言うのも上品過ぎるくらいの堕落だ。政権の番人ですらなく、ただのゴマすり、 虎の威を借るキツネのようだ。安倍首相がすぐにクビにしないのもおかしい」と手厳しい。
↑参院予算委で、6日の同委での野党議員に対する答弁を撤回、謝罪し頭を下げた横畠裕介内閣法制局長官(左発言席)=国会で↑
どうして官僚たちの「高慢と偏見」はここまで強まり、表面化するようになったのか。
明治大の酉川伸一教授(官僚分析)は「そもそも重要閣僚が絶対あり得ないヘイト発言をする安倍政権下であり、しかもそれが倒れない。『なんだ大丈夫なのか』という空気が官僚に伝播するのは当たり前で、厚労省課長らのような意識の官僚や公務員は多いのかもしれない」と指摘する。
一九九〇年代から二〇〇〇年代に続いた官僚バッシングを経験したことで、官僚の中には鬱々とした意識が滞留していた。だが、官僚主導から政治主導への政治改革をうたった民主党政権が失敗し、官僚バッシングが弱まる一方、安倍政権は長期政権化して行政全体が『お上化』した。「官僚も公僕意識がなくなり、以前の反動から、高慢なお上意識が表面化しているのだろう」と話す。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏も「官僚には怖いものがなくなった」と指摘 する。「良くも悪くも、昔は自民党内に怖い族議員がいた。その威光が強い時代には官僚たちは首相案件の政策であっても、首相だけに付度することはできなかった。今は族議員がなくなり、自民党内も安倍一強体制なので『官邸の意向』を持ち出せば、センセイたちも黙ると官僚は高をくくっている。当然、世論の後押しが弱い野党議員など論外。国会を軽視し、その背後にいる国民も軽視する。だからこそ平気でデータや記録をねつ造する」と語る。
今年二月に「官僚たちの冬~霞が関復活の処方箋」(小学館新書)を出した元財務官僚で明治大教授の田中秀明氏(政治学)は「日本の官僚制度は、法律・制度上は政治的中立が厳しく求められている英国型の公務員制度だが、実態は、政治家との個人的コネクシ ョンによって出世する独・仏型の官僚制度に近くなってきた」と指摘する。
官僚の政治化とは、文字通り政治家との距離が近く、その政治的影響を直接受けていることはもちろん、官僚や省庁が自身の利害を持ち、その追求を図っていることも含む。田中氏は、安倍政権下では、一四年に設置された内閣人事局に代表される新たな幹部公務員の任免制度によって、政権への付度がさらに進んでいるとみる。
「国家公務員法が規定する通り、本来は公務員は政治的中立性を持ち、いい情報も悪い情報もすべて政治家に提供し、政治家が決断するという姿にすべきだが、首相官邸に異を唱えるような官僚は更迭されたりして、イエスマン化せざるを得ない。首相の側近官僚が分を超えた政策決定に関与しているのも問題だ 」として提言する。「幹部官僚を公募しつつ、 政治家は間接的にしか関与できないオーストラリアの制度などを参考に改革すべきだ」
【デスクメモ】
六年前、総務省から復興庁に出向していた元参事官によるツィッターへイト事件は衝撃だった。原発被災者らに「クソ左翼」と匿名で中傷していた。当時同省は勤務中のSNSを禁止したが、他省庁にはよそ事だった。だがあの時、すでにネトウヨは官僚の世界にまん延していた。(直)
2019・3・30
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■一強を謳歌する安倍政権ですが、官僚への政治主導を示す一例としては、昨年2018年12月26日に政府が決定を発表した国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退があります。
官邸がこの決断に至る過程では、古くから捕鯨が盛んだった地域の山口県下関市を地元とする安倍晋三首相と、同じく和歌山県太地町を地元に擁する二階俊博自民党幹事長の意向が大きく働いたとみられており、水産庁の関係者もそれを認めていました。
このIWT脱退については、国内でも賛否両論ありますが、日本が戦前に孤立化を深めるきっかけになった国際連盟脱退を想起させ、パリ協定など国際枠組みからの離脱を表明するトランプ米大統領の姿とも重なり、さらに来年は大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議をはじめ重要な外交案件が立て込んでいることから、影響を懸念する声のあるのも事実です。
そしてなによりも、IWT脱退が国民のコンセンサスではなく、総理と副総理のお膝元からの事情と都合によって、政治家主導で進められた結果であることに、なにやら不安めいたものを感じるのは当会だけでしょうか。
■国や地方を問わず、最近の公務員は公僕としての矜持(きょうじ)が薄らいでしまい、上から目線の傲慢さがプライドだと勘違いしている者が増殖しています。
当会は、そうした公務員らの不当な権限の行使で被害を受けた住民とともに、劣化した公務員の撲滅を目指し、行政における違法不当な権限の行使の実態を公にすることで警鐘を鳴らし続けてまいる所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「公務員の劣化と民主主義
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公務員の「劣化」が蝕む民主主義の根幹
再発防止に向け「公務員制度改革」が急務だ
↑森友文書改ざん問題で国会審議が空転している(写真:つのだよしお/アフロ)↑
★森友学園問題は「組織ぐるみの不正」
森友学園への国有地売却問題は、財務省の指示による決裁文書の書き換えが明らかになるという驚愕の展開となった。多くの現役官僚や官僚OBは公文書改ざんについて、異口同音に「考えられない」「あり得ない話」と語る。まさに「一線を越えた不正」である。
財務省は佐川宣寿理財局長(当時)個人の不正に矮小化しようとしているように見える。だが、改ざん実行までには複数の幹部が関与しているのは明らかで、局長の指示を受けたからといって疑問を挟まずに不正の実行を部下に命令するのは明らかに「組織ぐるみの不正」だ。歴史的に大きな権力を持ち続けてきた財務省、そして財務官僚の目を覆わんばかりの「劣化」である。
もちろん、背景に政治家の指示があったとか、政治家への「忖度」があったという「理由」があるのかもしれない。だが、それとこれとは別問題。政治家に言われれば、官僚はどんな不正でも行うのか。そんなことはあり得ない。
組織的な公文書の改ざんは、民主主義の根幹を揺るがす。都合が悪くなったら過去の文書を書き換え、国会で嘘の答弁をする。そんなことを許すわけにはいかない。では、どうやって再発を防ぐか。
不正を働けば官僚個人も官僚機構も大きな損害を被るのだ、という事を全霞が関に理解させる必要がある。徹底的に問題を追及し、関与した幹部官僚は免職、天下りも許さない。財務省には解体的な出直しを求める。そして何より必要なのが「公務員制度改革」に再び本腰を入れて取り組むことだろう。
「安倍内閣は役人に優しい内閣ですから」。この問題が発覚する直前、民主党政権で大臣を務めた野党の幹部がこう笑っていた。
民主党は「脱官僚依存」を公約の1つに掲げ、官僚主導から政治主導へと大きく舵を切ろうとした。ところがやり方が稚拙で、政務三役(大臣、副大臣、大臣政務官)の会議から官僚を「排除」するなど、「脱依存」の意味を履き違えた。結果、霞が関も猛烈に反発、官僚機構が「非協力」を決め込んだ。民主党政権の瓦解は、霞が関の消極的反乱が一因だったと見ることもできる。
★天下りに「理解」を示した第2次安倍内閣
2012年末に政権を奪還した第2次安倍内閣は、一転して「公務員に優しい」姿勢を取った。第1次安倍内閣は「公務員制度改革」に本腰を入れ、霞が関の反対を押し切って、2007年に国家公務員法改正案を国会で可決させた。各省庁による天下りの斡旋禁止と、年功序列の打破が柱だった。当時の安倍内閣の閣僚たちはこの改革で霞が関を敵に回したことが、わずか1年で内閣が崩壊することにつながったと考えた。第2次安倍内閣が官僚を味方に付ける政策を取ったのは、民主党の失敗だけではなく、第1次安倍内閣の失敗の反省でもあった。
政府系金融機関の民営化はストップ、幹部への天下りにも安倍内閣は「理解」を示した。民主党政権で大幅にカットした公務員給与も元に戻し、それ以降も賃上げを容認している。公務員制度改革の司令塔だった「国家公務員制度改革推進本部」は2013年7月に「設置期限を迎えた」という理由で廃止された。
公務員制度改革を担うはずの担当大臣も目立たなくなった。第1次安倍内閣の時は担当大臣の名称は、「公務員制度改革担当」だったが、今は「国家公務員制度担当」と「改革」の文字が抜け落ちている。まさに「名は体を表す」だ。
そんな中で、唯一改革が進んだと見られたのが「内閣人事局」である。霞が関の幹部官僚600人の人事を一元的に行う組織で、2014年5月に生まれた。それまでの幹部人事は各省庁がバラバラに行っていた。もちろん、内閣官房長官や所管の大臣も決裁するのだが、圧倒的に各省庁の事務次官が人事権を握っていた。
「省益あって国益なし」。日本の官僚制度の弊害はしばしばこう言われてきた。内閣官房で幹部人事を一元的に行えば、内閣の方針に従って官僚機構が動くようになる。まさに「国益第一」の組織になるというのが狙いだった。当然、首相をトップとする「官邸主導」の体制を強化することになる。
この内閣人事局は安倍内閣以前の公務員制度改革の中で設置が決まっていたものだが、「改革派」だった安倍氏が設置のタイミングで再び首相になっていたのは因縁である。
焦点は「局長人事」だった。内閣人事局長は官房副長官が兼ねることになっている。官房副長官は3人。衆議院議員から1人、参議院議員から1人、そして事務方のトップから1人である。内閣人事局の創設当時、霞が関の多くの官僚は当然、事務方の副長官が「局長」に就任すると思っていた。それが土壇場で政治家に差し代わる。安倍首相らの強い意向があったとされる。
初代内閣人事局長は加藤勝信副長官(現・厚生労働大臣)、2代目は萩生田光一副長官(現・自民党幹事長代行)が就いた。改革姿勢を示すことにつながったのは事実だ。
財務省の決裁文書改ざん問題で、この「内閣人事局」を批判する声が霞が関の官僚から上がっている。政治家が人事権を握ったから、政治家への「忖度」が働くようになった、というのだ。確かに、幹部官僚が官邸の意向を気にするようになったのは事実だ。自省の事務次官よりも官邸の意向を重視する例も頻発している。だが、それは政治家への忖度というよりも、官邸に詰める幹部官僚の指示という色彩が強い。一部の重要な問題を除いて首相や官房長官が直接指示を発しているケースは多くない。
★内閣人事局で起きた「大政奉還」
それでも霞が関が「内閣人事局」のせいで政治家への忖度が働いていると言いたいのは、旧来の官僚主導に戻したいという思いなのだろう。
では、安倍内閣は内閣人事局を使って、人事権をフルに行使しているのかと言うとそうでもない。一部の人事に政治の意向が反映されているのは間違いないが、それは事務次官が人事を握っていた当時とあまり変わりはない。
初代の内閣人事局長だった加藤氏は財務官僚出身で、官僚の話をよく聞いてくれる霞が関でも評判が良い政治家だ。
だが、その内閣人事局長人事でも、安倍内閣は後退している。3代目に就いたのは杉田和博副長官。警察庁出身の官僚トップの副長官である。いわば政治家から官僚へ「大政奉還」が済んでいるのだ。2017年8月のことだ。
今やるべきことは、むしろ政治家が官僚機構の人事権を握るための改革を進めることだ。国益第一で政策を遂行するために、幹部官僚600人の適材適所を行う。今は難しい降格などの異動も可能にすべきだ。降格ができない現状では、ポストがあかないため、なかなか抜擢人事や民間からの登用ができない。
天下りも厳しく規制すべきだ。日本取引所グループには金融庁長官や財務省幹部が天下っているが、東芝の上場廃止を巡って自主規制法人が「甘い」決定を下した背景には天下り官僚による「主導」があった。官邸や経済産業省など霞が関の意向が反映されたと疑われている。
東芝の粉飾決算については証券取引等監視委員会が、東京地検に刑事事件として立件するよう求めたが、一向に実現しなかった。これも委員会が独立性の低い組織で、自ら告発できないためだ。米国の証券監視委員会のような強力な捜査権限、告発権限を持った独立性の高い組織にする必要がある。公正取引委員会と同じ、いわゆる「3条委員会」である。だが、そうした制度改革に徹底して抵抗するのは金融庁や財務省。自分たちの権限やポストが減ることに抵抗しているのである。
不正は徹底的に追及され、処罰されるべきだ。官僚組織による「忖度」を行わせないためには、政治や社会によるチェック体制を整える必要がある。不正を働いても絶対に得をしない体制を作るべきだ。
今回の決裁文書改ざんを許してはならない。財務省解体にまで踏み込むべきだ。その上で、政治家への「忖度」が働いたことに対する政治責任を取るべきだ。財務大臣が責任を取るのは当然である。
(磯山 友幸)
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