市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

東邦亜鉛の鉛・ヒ素入り非鉄スラグ問題・・・首都高の塗装補修作業で明らかになった鉛の有毒性

2019-04-28 23:19:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

■首都高速の橋桁の錆止め塗料にかつて高度経済成長期からバブル期にかけて使用された鉛入り塗料が、最近の塗装更新で、下地塗装を剥がす必要性が増えているため、鉛による作業者への健康リスクが高まっているというニュースが、連休突入直後に報じられました。一体、鉛がどのように作業者の体内に取り込まれたのでしょうか。関連記事をチェックしてみました。
**********毎日新聞2019年4月27日 03時05分(最終更新 4月27日 03時17分)
防護対策は手探り 鉛塗料はがす工事増加、飛散リスク高まる

塗装工事が進められている首都高7号小松川線の高架下。鉛を含んだ塗料をはがす作業中であることを知らせる掲示がされていた=東京都江東区で4月16日、大久保昂撮影

 鉛の飛散リスクが高まっているのは、高度経済成長期からバブル期にかけて橋桁のさび止めに使われた鉛塗料が劣化し、更新時期を迎えつつあるからだ。
 高速道路の橋桁の鋼材には塗料が何層にも塗り重ねられており、さび止め塗料は「下塗り」と呼ばれる内側の層に当たる。外側の層に守られているために劣化が緩やかで、下塗りに手を加えず、外側の塗り替えだけで済むケースがこれまでは多かった。しかし、首都高の大半の路線で開通から30年以上が経過し、下塗りの劣化も目立ってきた。首都高の担当者は「今後、鉛塗料をはがす工事が増える可能性がある」とみている。
 労働安全衛生法などは鉛から労働者を守るための対策や健康管理を義務づけているが、規制対象となるのは現場の塗装工を直接雇用している事業主だ。工事を発注する側の首都高も13~14年に鉛中毒の発症者が出たことに危機感を強め、受注業者に対して特殊なマスクの使用や使い捨て防護服の着用を義務づけるなどの対策を打ってきた。
 ただ、新たに導入した対策が別の問題を引き起こして再考を余儀なくされるなど手探りの面もある。
 例えば、首都高は14年10月、特殊な薬剤と塗料を化学反応させてはがす手法を全面的に取り入れた。鉛の飛散を防止するための試みだったが、15年2月にこの工法で作業していた首都高7号小松川線の現場で火災が発生し、作業員2人が死亡した。
 薬剤では鉛塗料がはがしにくいことも明らかになり、機械で塗料を削り取る方法に戻した。首都高は粉じんの飛散防止対策を以前よりも手厚くすることで、作業員たちが吸い込まないようにしているという。【大久保昂】

**********毎日新聞2019年4月27日 03時00分(最終更新 4月27日 03時17分)
首都高速、鉛中毒リスク 労働者の2割検出 東京の診療所

塗装工事が進められている首都高7号小松川線の高架下。鉛を含んだ塗料をはがす作業中であることを知らせる掲示がされていた=東京都江東区で4月16日、大久保昂撮影
 首都高速道路の塗装工事などに携わり、健康診断を受けた労働者170人のうち、2割近くに当たる31人の血液から、鉛中毒の発症リスクが高まる濃度の鉛が検出されたことが健康診断を担当した医師の調査で判明した。平成初頭までに整備された高速道路の鋼材の塗装には、さび止め剤として鉛が使われているケースが多く、塗り替え工事で削り落とした際に飛散し、吸い込んだ可能性がある。古いさび止め塗料は更新時期を迎えつつあり、労働者の健康をいかに守るのかが課題に浮上している。【大久保昂】
 労働者を鉛にさらされる作業に就かせる場合、鉛の血中濃度などを調べる健康診断を受けさせることが雇用主には義務づけられている。首都高で塗装工事をしていた労働者の健康診断を請け負った「ひらの亀戸ひまわり診療所」(東京都江東区)の毛利一平医師は、鉛の血中濃度が異常に高い人が多いことに気がついた。
 そこで、鉛による健康被害の危険性の広がりを確かめようと、2017年8月~19年4月に同診療所で健康診断を受けた170人の血中濃度を集計した。大半が首都高の塗装工事を担当していたり、そうした現場に出入りしていたりする労働者だった。
 集計の結果、鉛中毒と診断された労働者はいなかったものの、発症リスクが高まる水準として国が示している目安(血液100ミリリットル当たり40マイクログラム)を超えていた労働者が31人いた。最も高い人は81・8マイクログラムに達しており、4人の外国人技能実習生も含まれていた。
 さらに昨年7月ごろ、血中濃度の高い労働者5人の皮膚の表面を鉛に反応する薬剤で調べたところ、全員の体に鉛が付着していることも分かった。毛利医師は「鉛の飛散対策が不十分で、現場で吸い込んでいる可能性が高い」と指摘する。
 首都高の塗装工事を巡っては、13~14年に労働者2人が鉛中毒を発症した。これを受け、厚生労働省や国土交通省は建設業界に加え、工事を発注する高速道路会社や自治体などにも対策の徹底を求めてきたが、現場への浸透は容易ではない。
 首都高も昨年から現場の抜き打ち検査に乗り出すなど対策を強化しており、「受注業者に対して鉛対策の徹底を義務づけているが、現場で徹底されていなかった可能性はある。発注者の責務として指導していく」と話している。
 塗料メーカーでつくる「日本塗料工業会」(東京都渋谷区)は1996年から鉛を含んだ塗料の削減を進めており、現在は国内ではほとんど使われていない。
「現場への教育徹底を」
●久永直見・愛知学泉短期大非常勤講師(産業医学)の話
 倦怠(けんたい)感や腹痛といった鉛中毒の症状が表れても、その時点では、医師も原因に気づかない例が多い。近年はインフラの更新によって発症リスクが高まっており、見落としを防ぐためには医師が必要な知識を持つことが不可欠だ。また、中小の塗装業者や一人親方も含め、作業者への教育を徹底する取り組みも進めてほしい。
<鉛中毒>
 鉛を体内に取り込むことで起きる健康障害。頭痛や倦怠(けんたい)感、手足のまひなどの症状に襲われ、死に至ることもある。全国労働安全衛生センター連絡会議(東京都)によると、1996~2016年度に国内で38件が労災認定された。世界保健機関(WHO)は13年、世界で毎年14万人以上が鉛中毒で死亡しているとの推計を発表している。

**********日経コンストラクション2018年12月12日05:00
塗装作業員から高濃度の鉛検出、首都高の補強工事
 首都高速道路の補強工事に携わる複数の塗装作業員の血液から、激しい腹痛などを伴う「鉛中毒」を発症する恐れのある高濃度の鉛が検出されたことが分かった。
 作業員は別の工事で被害に遭った可能性も指摘されているが、鉛の血中濃度は首都高の現場で働くようになってからもおおむね横ばいで推移している。
 首都高の工事では5年ほど前、塗装作業員が鉛中毒を発症している。塗装の塗り替え工事で、既存の塗料をかき落とすケレン作業をしていた作業員が、飛散した高濃度の鉛の粉じんを吸引したのが原因とみられる。
 その後、国や自治体、高速道路会社などが再発防止策を講じてきたが、今回の問題はいまだに塗装作業員が鉛中毒にかかる恐れがあることを物語っている。

問題が発覚した首都高7号小松川線の補強工事の現場。画像を一部加工(写真:日経コンストラクション)
(谷川博)
**********

■高速道路の橋桁の鋼材には塗料が何層にも塗り重ねられており、さび止め塗料は「下塗り」と呼ばれる内側の層に使用されました。外側の層に守られているために劣化が緩やかで、下塗りに手を加えず、外側の塗り替えだけで済むケースがこれまでは多かったのですが、首都高の大半の路線で開通から30年以上が経過し、下塗りの劣化も次第に目立ってきました。首都高の担当者は「今後、鉛塗料をはがす工事が増える可能性がある」とみていました。

 我が国では1990年頃まで、高速道路の橋梁など鉄に塗る塗料に、防錆などのために鉛丹(四酸化三鉛)が混入されていました。橋梁塗装は、塗膜の劣化のため、約5~10年毎に塗り替えを行いますが,この時にディスクグラインダーを使って、古い塗膜を削る作業を行っています。この時、鉛粉じんが発生して、鉛中毒を起こす事例が報告されてきました。

 首都高速道路は、高速道路の構造物の約8割を高架橋形式が占め、その大半で鋼桁形式を採用しています。そのため、鋼橋の塗装更新は必須であり、最近5年間は、毎年約14万㎡の需要があるそうです。これまでにも作業員の鉛中毒が発生したり、鉛塗料を剥がすために溶剤を使用したことから2度の火災事故を起こすなど、その作業環境の抜本的な変更が必要となっていました。

 その結果として制定されたのが「鋼橋塗装設計施工要領」で、首都高の現場に即した塗膜除去方法、安全・安心・環境を意識した水性塗料の採用、コンクリート高欄の長期耐久性を企図した防水塗装の採用などが反映されていますが、やはりまだ末端の作業者には徹底し切れていなかったようです。

■鉛入りの粉塵を吸引することで発症する恐ろしい鉛中毒ですが、東邦亜鉛安中製錬所の降下ばいじんの中にも鉛など有害重金属が含まれていることが、群馬県の調査データからも確認されています。
○2019年4月17日:鉛やカドミウムが通常より最大60倍降り注いでいる東邦亜鉛安中製錬所周辺の土壌汚染の深刻度
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2933.html

 東邦亜鉛は、鉛やヒ素入りの非鉄スラグをこれまで大量に岡田工務店を通じて、内陸県である群馬県の広範囲にばら撒いてきましたが、安中製錬所の周辺に住む住民にとっては降下ばいじん中に含まれる鉛やヒ素、カドミウム、水銀などの有害物質の管理もズサンであり、製錬所周辺の土壌はこれらの有害物質で高濃度に汚染されています。

 地元住民に対しても「降下ばいじん対策要領」を緊急に制定し示す必要が東邦亜鉛にはあるのではないでしょうか。

【ひらく会情報部】

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【スラグ報道】前橋市は有害スラグを撤去!大同スラグ投棄問題

2019-04-28 01:31:00 | スラグ不法投棄問題

■平成27年9月11日に群馬県は大同特殊鋼が排出し、佐藤建設工業が群馬県中にばら撒いた有害スラグを廃棄物に認定しました。しかし群馬県環境森林部はその後、投棄された有害スラグ=廃棄物の対策をどうするか、方針を未だに示していません。県民の生活環境を守るはずの群馬県環境森林部は、いまだに不作為を貫いているのです。
 また群馬県環境森林部は佐藤建設工業の廃棄物処理の許可を取り消す行政処分を行いましたが、廃棄物撤去の措置命令を発出していません。こちらも不作為を貫いている格好です。
 そんな中、廃棄物について自ら権限を持つ中核市である前橋市が「大同スラグを撤去した」、とする新聞報道がありました、見ていきましょう。


**********平成31年(2019)4月24日上毛新聞
鉄鋼スラグ問題 市道の工事完了 前橋市
 鉄鋼メーカー、大同特殊鋼渋川工場(渋川市)の鉄鋼スラグ問題で、前橋市は23日、環境基準を超えるフッ素が検出されたスラグが使われた同市富士見地区の市道8路線の対策工事を終えたと明らかにした。
 2014年に調査結果を公表後、16年度から対策工事をしてきた。路盤材として鉄鋼スラグが使われた市道は計1261メートル。スラグの撤去と処分、路盤材の費用約5千万円は同社が負担した。市は地下水の水質など環境への影響がないか、監視を続ける。同日の市議会建設水道常任委員会で報告した。
**********

 この報道内容について、いつものとおり、ポイントを整理していきましょう。

ポイント①基準値を超えたスラグが使用されたこと。

ポイント②対策工事の内容は「撤去と処分」であること。

ポイント③市は地下水の水質など環境への監視を続けること。


■では、それぞれについて検証してみます。

ポイント①基準値を超えたスラグが使用されたこと。

 前橋市のホームページを見ると、前橋市も「鉄鋼スラグ連絡会議」の対策方針に沿ってスラグ対策を考えていることが分かります。
※前橋市のホームページ↓
https://www.city.maebashi.gunma.jp/sangyo_business/1/3/3/10036.html

 この「鉄鋼スラグ連絡会議」なる名称の組織は、廃棄物について何の権限も持っておらず、したがって、その対策方針はもともと間違った内容となっています。

 その最大の間違いは、スラグとスラグでない物を混合したまま、環境分析することです。今回の富士見町の8路線は環境基準値を超えていた路線となっているらしく、そのせいで撤去となったようですが、他の6路線は「環境基準を満足している」として、撤去せずにそのまま放置されているようです。

 本来であれば他の6路線は、有毒スラグとスラグでない物を分離してからスラグを撤去しなければならないハズです。分離が不可能なら、全てを撤去するべきです。前橋市の対応策は間違っています。

ポイント②対策工事の内容は「撤去と処分」であること。

 「路盤材として鉄鋼スラグが使われた市道は計1261メートル。スラグの撤去と処分、路盤材の費用約5千万円は同社が負担した。」と報道されています。この約5千万円の対策費用は「大同特殊鋼が負担した」となっています。

 当会の見解では、対策費として5千万円は、他の場所と比べて安いような気がします。
「本当に撤去したのか?」と疑問を抱いてしまうのは当会だけでしょうか。

 とはいえ、いずれにせよ「スラグの撤去と処分」が行われたのは、正しい姿だと言えます。群馬県環境森林部が大同スラグを廃棄物に認定したわけですから、「廃棄物処理法に基づいて最終処分場に処分する」ことこそが、「適正に処理する」ということになります。渋川市などは、環境基準値をはるかにオーバーしようとも、アスファルトでフタをし、廃棄物処理法を無視し続けているのですから、言語道断です。

ポイント③市は地下水の水質など環境への監視を続けること。

 「市は地下水の水質など環境への影響がないか、監視を続ける。同日の市議会建設水道常任委員会で報告した。」と報道されています。オヤッと頭をかしげる方もいらっしゃることでしょう。

 ポイント②で、「前橋市は、スラグを撤去と処分・路盤材での現状復旧を行った」ことを紹介しました。ところがその一方で、「前橋市はスラグを撤去・処分した」にもかかわらず、「市は地下水の水質など環境への影響がないか、監視を続ける」と表明しています。

 前橋市は本当にスラグを撤去したのかどうか、疑ってしまうのは当会だけでしょうか?また、有害スラグに汚染された土壌をそのまま存置してしまっている、というのでしょうか?

■大同特殊鋼が排出し佐藤建設工業が群馬県中にばら撒いた有害スラグが廃棄物認定されて、スラグが適正に処理されると、県民として期待したにもかかわらず、行政が行ったスラグ対策の報道に接するにつけ、失笑を禁じ得ない対策ばかり読まされています。

 大同スラグ問題に取り組んでこのかた5年の歳月が経過しました。そろそろ廃棄物処理法に則った適正な処理にお目にかかりたいものです。ちなみに当会が大同スラグ問題を取り上げた最初のブログ記事です。↓
〇2014年3月8日:大同特殊鋼渋川工場が排出した鉄鋼スラグから有害物質が溶け出した事件でオンブズマンが県に情報開示請求
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1228.html

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考資料1:大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について
**********
 平成27年9月11日廃棄物の監督官庁である群馬県廃棄物・リサイクル課は、有害スラグは“有価物”だとする大同の主張を全面否定し、廃棄物と認定しました。しかしその後の廃棄物・リサイクル課の担当者が「一概に廃棄物とは言えない」などの戯言を繰り返したり、「環境省が発出した行政処分の指針に必ずしも従わなくてもよい」と発言するなど、今日に至ってもスラグを適正に処理する対策を示していません。最近の担当者はどうやら、「スラグの適正処理はこれから・・・」など嘘ぶく始末であることらしい。
スラグ廃棄物認定はこちら↓↓
http://www.gunma-sanpai.jp/gp26/003.htm

※参考資料2「県による佐藤建設工業への行政処分」
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 (株)佐藤建設工業は、大同有害スラグを天然石と混合したことで群馬県より廃棄物の許可を取り消される行政処分を受けた悪質建設資材販売業者です。
 また(株)佐藤建設工業は豊富なスラグマネーを背景に建設業にも手を広げ、ソフトバンクソーラー造成工事(榛東村)、ビックカメラソーラー造成工事(安中市)、八ッ場ダム関連建設工事などを請け負い、その工事でスラグと知りながら積極的に有害物を使用しました。
 (株)佐藤建設工業は産業廃棄物の処理や運搬する許可を群馬県から受けていたので、廃棄物について熟知しており、スラグを取り扱うことが違法であることを知りながら、悪意で建設工事に有害スラグを使い続けていたのです。せめて自ら請け負った工事に使用したスラグは(株)佐藤建設工業に撤去片づけさせなければなりません。

 行政処分の内容はこちらです。↓↓
○2016年08月05日:【速報】佐藤建設工業に行政処分
http://blog.livedoor.jp/lytton_cyousadan/archives/5289331.html
**********

コメント (4)
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